研究課題/領域番号 |
19K16936
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研究機関 | 第一薬科大学 |
研究代表者 |
濱村 賢吾 第一薬科大学, 薬学部, 助教 (30756466)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エクソソーム / 神経障害性疼痛 / ホルマリンテスト |
研究実績の概要 |
エクソソームとは、体液中に存在する直径40-200nmの脂質二重膜の小胞である。近年、疼痛時の血清から単離したエクソソーム中に存在する物質が、疼痛強度の指標となることが報告された。しかし、エクソソームと疼痛強度そのものとの関連性は解明されていなかった。我々はこれまでに、坐骨神経部分結紮(partial sciatic nerve ligation: PSL)マウス血清由来のエクソソーム二重膜上のタンパク質が、低濃度ホルマリン誘発侵害刺激行動を増強することを明らかとした。 そこで本研究では、PSLマウスの血清由来のエクソソームに着目し、疼痛強度を増強させるエクソソーム二重膜上の因子を同定すること、およびエクソソーム中の疼痛強度増悪に関与する二重膜上の因子を排除することで痛みを緩和できるという新規治療標的の確立を目的とした。 現在までの研究で、プロテオーム解析によりマウス血清由来のエクソソームから736種類のタンパク質を同定し、偽手術群と比較しPSL群で1.3倍以上発現が増加したものは66種であることを明らかとした。この66種の中で因子Xに着目し、正常マウスに因子Xのリコンビナントタンパク質を投与したのちホルマリンテストを行ったところ、用量依存的に侵害刺激関連行動が増強した。また、野生型PSLマウス血清由来のエクソソームでホルマリン誘発侵害刺激行動が増強する用量において、因子Xの機能欠損マウス血清由来のエクソソームでは、侵害刺激行動の増悪がみられなかった。 今後は、正常マウスに因子Xの受容体拮抗薬を前処置することで、野生型PSLマウス血清由来のエクソソームによる侵害刺激増悪が拮抗されるか否かの検討を行うことで、因子Xがホルマリン誘発侵害刺激行動の増悪因子であることを証明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、PSLマウスの血清由来のエクソソームに着目し、疼痛強度を増強させるエクソソーム二重膜上の因子 (タンパク質) をプロテオーム解析により候補を抽出し、行動薬理学的検討により同定することを目的としている。 エクソソームのプロテオーム解析の結果、マウス血清由来エクソソームからは736種類のタンパク質を同定、436種類のタンパク質を選出した。選出した436種類のうち、偽手術群に対するPSL群の発現量比較を行い、PSL群の血清由来エクソソーム群において発現量が1.3倍以上増加したものは66種類であった。この66種の中で因子Xに着目し、因子Xが侵害刺激増悪因子であることの証明を行動薬理学的に行った。 まず、正常マウスに因子Xのリコンビナントタンパク質を投与したのちホルマリンテストを行ったところ、用量依存的に侵害刺激関連行動が増強し、PSLエクソソームでみられた侵害刺激の悪化が再現できた。また、野生型PSLマウス血清由来のエクソソームでホルマリン誘発侵害刺激行動が増強する用量において、因子Xの機能欠損マウス血清由来のエクソソームでは、侵害刺激行動の増悪がみられなかった。さらに、偽手術群および PSL エクソソームの因子Xタンパク質の発現を比較したところ、偽手術群との比較ではPSL群において発現が増加した。この増加はPSLマウス血清由来のエクソソーム二重膜上に発現する膜タンパク質をトリプシン処理にて除くと消失し、その発現量は偽手術群と同程度であった。なお、偽手術群ではトリプシン処理による影響はみられなかった。 申請課題研究開始前に二次元電気泳動法を用いて解析を試みたが、偽手術群に比べてPSL群で発現が変化したスポットが多数検出されたために断念した。しかしながら、本研究にてプロテオーム解析を実施することができ、因子Xを同定できつつある状況であるため概ね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、正常マウスに因子Xの受容体拮抗薬を前処置することで、野生型PSLマウス血清由来のエクソソームによる侵害刺激増悪が拮抗されるか否かの検討を行うことで、因子Xがホルマリン誘発侵害刺激行動の増悪因子であることを証明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度が最終年度であるため、繰越させていただきます。
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