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2019 年度 実施状況報告書

液性因子としてのαシヌクレインの加齢に伴う血管内皮機能障害での病態機能の多様性

研究課題

研究課題/領域番号 19K16949
研究機関大阪大学

研究代表者

永澤 元規  大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (00823535)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードαシヌクレイン / 血管内皮機能 / oligomer / fibril / 炎症 / レビー小体型認知症 / エクソソーム / 老化
研究実績の概要

当該年度においては、SNCAの分子形態が血管内皮機能に及ぼす影響を中心に検討した。monomer、active monomer、pre-formed fibril(PFF)の分子形態を有するSNCAリンコンビナント(rSNCA)を血管内皮細胞(HUVEC)に添加し、以下の結果を得た。
①添加前の凝集活性を検討したところ、monomerでは有意な活性を認めなかったが、active monomer+PFF、PFFでは有意な上昇を認めた。②①のrSNCAを2日間、37℃でincubationし、HUVECに添加しても有意な炎症性分子の発現上昇は認めなかった。③①のrSNCAをincubationせずにHUVECに添加したところ、monomerでは有意な炎症性分子の発現は認めなかったが、active monomer+PFF、PFFではTNF-α、IL-1β、IL-6の発現上昇を認めた。一方、eNOSは発現低下を認めた。
これらの結果からは、外因性SNCAの分子形態の違いによる血管内皮細胞への影響としてについて、凝集体は無機能であるが、凝集活性を有するoligomerやfibrilは炎症を惹起する可能性が考えられた。
また、マウスミクログリアの細胞株MG6については、2日間37℃でincubationしたmonomer、active SNCA+PFFを添加すると炎症が惹起され、貪食作用に伴う炎症促進が推測された。細胞種の違いにより反応性が異なる可能性がある。
神経細胞株(SH-SY5Y)にWT及び易凝集性のmutantをレンチウイルスを用いて過剰発現させ、培養上清中のエクソソーム及びそれ以外の分画に分け、血管内皮細胞に添加し、血管内皮機能への影響をみる実験も行っているが、現在のところ一定した結果は得られていない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度はSNCA分子形態の違いが血管内皮、ミクログリアに及ぼす影響について、rSNCAを用いた実験では上記の如く、炎症やそれに伴うeNOSの発現変化について結果が得られているが、神経細胞の培養上清中のエクソソーム中のSNCAの血管内皮細胞やミクログリアへの病態機能についての検討は一定した結果が得られず、現在、続行中である。エクソソーム中のSNCAの血管内皮細胞内でtraffickingの検討やマウスに投与することによるin vivoでの血管内皮機能変化の検討は施行できていない。液性因子としてのSNCAの結合蛋白の検索も続行している。本年度はin vitroの実験系を概ね終了する予定であったが、達成できておらず、進捗状況としてはやや遅れていると評価した。

今後の研究の推進方策

①中枢神経におけるSNCAの脳血管内皮への病態生理機能を(in vitro):SNCAのリコンビナントを用いた検討では炎症に加え、eNOS活性化や血管透過性への影響についても検討する。SH-SY5Yを用いた実験についてはレチノイン酸やBDNFで分化誘導した細胞を用いても検討する。また、神経細胞や血管内皮細胞としてneuro2aやbEnd3に細胞種を変えて検討する。conditioned mediumやco-cultureの系を用いて、血管内皮細胞とミクログリアやアストロサイトとの相互作用についても検討する。
②エクソソーム中のSNCAの末梢血管内皮機能へ及ぼす影響:培養上清や血清からのエクソソームの抽出純度を上げる検討も行う。in vitroでの実験系を確立してからin vivo投与による実験を行う。
③液性因子としてのSNCAの蛋白相互作用:実験操作におけるコンタミネーションを極力避ける努力をし、質量分析結果の信頼性を上げる。既報告のSNCAとの相互作用を有する液性蛋白であるHSP70やHSP90、アルブミンにも着眼した検討も同時並行して行う。
④上記結果に基づく臨床検体を用いた検討:ヒト血清アルブミン(HSA)がSNCA oligomerの毒性を減じるとの報告があり(J Am Chem Soc. 2020)、③の結果が出るまで、SNCA oligomerの測定を行い、既存のHSAのデータを用いて各種血管内皮機能関連の臨床データとの相関を検討することを考慮している。

次年度使用額が生じた理由

これまではin vitroでの検討が中心であり、既存の消耗品も多く、当初の予定よりも研究費の使用がやや少なかった。前述の如く、次年度においてはin vivoの検討や新規の消耗品を用いる実験が大幅に増えると考えられ、その研究費に追加使用する予定としている。使用用途してはin vitroでの消耗品に加え、動物購入費や飼育代、各種抗体や実験キット、解析費用などを予定している。

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公開日: 2021-01-27  

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