研究課題/領域番号 |
19K16951
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
柴田 恵理子 徳島大学, 病院, 特任助教 (40831516)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バイオマーカー / Programmed Cell Death 4 / microRNA |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病は日本における新規のcommon diseaseとなり,その数は成人人口の13%に達している。心血管疾患発症のリスクが高く,その治療法の確立は重要課題である。また、診断面では病期病態を反映する非侵襲的バイオマーカーにとぼしい。本研究では、腎疾患の増悪過程において役割があきらかでないPDCD4(Programmed Cell Death 4)とその発現調節に直接関わるmicroRNAの部位特異的な役割を中心に解析をすすめている。令和2年度はin vivoにおいて抗Thy1-1腎炎モデルにおいてメサンギウム領域にPDCD4の発現増加を認め、ステロイド投与によって、PDCD4が増加するとともに病変の変化を生じることがわかっていたため、その尿におけるmicroRNAマーカー候補因子の排出を検討した。また、PDCD4の役割を、in vitroにてメサンギウム細胞にPDCD4を強発現する、もしくはsh-PDCD4の導入により検討しており、アポトーシス、細胞増殖に関わる結果をすでに得た。更にループス腎炎モデルであるMRL/lprマウスにて糸球体でのPDCD4発現増加を認めたことから、このモデルにおいてもPDCD4の関与が明らかとなったため、やはり尿中のmicroRNAマーカー候補因子の排出を検討中である。さらに尿中エクソソームにも着目し、通常の尿からと尿中エクソソーム由来とどちらが効率よく、かつ、病勢を反映したmicroRNAマーカーになるか前述の抗Thy-1-1腎炎モデルとループス腎炎モデルにて経時的に検討している。逆にストレプトゾトシン誘導糖尿病性腎症モデルにおいてはPDCD4の発現の増減があきらかではなかった。また、ヒト慢性腎炎、ループス腎炎腎生検組織において、PDCD4の発現の定量化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
尿中のmicroRNAマーカー候補因子を同定できており、慢性腎炎モデル、ループス腎炎モデルで有用であることが分かってきている。また尿中エクソソームの採取については当科において、従来法よりも効率よく採取する方法をほぼ確立できており、その方法において尿中エクソソームの重要性をより確立できる可能性がある。in vitroにておいてはPDCD4の役割を確認できているものの、各疾患における代表的なサイトカイン刺激による動向は未施行であり今後の課題となる。ヒト腎生検組織においてPDCD4の発現は確認できており、予後との関連を解析できる。
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今後の研究の推進方策 |
抗Thy1-1腎炎モデル、MRL/lprマウスにおいて糸球体microRNAを経時的に採取しており、すでに同定している尿中のmicroRNAマーカー候補因子の発現を確認する。また尿中エクソソームも経時的に採取し、それに含まれるmicroRNAマーカー候補因子を定量し、病変との関連を検討、尿へのmicroRNAマーカー候補因子の排出量と比較し、どちらがより安定した病態を反映するマーカーとなるか検討する。その解析にしたがって、糸球体microRNAの採取時期特異的なquantitative RT-PCR arrayに持っていき、他のマーカー候補因子を探索する。in vitroにおいては、腎炎モデルにおける代表的なサイトカインであるPDGF,TNF-aを使用し、PDCD4のメサンギウム細胞における発現の動向と、PDCD4 cDNA、もしくはsh-PDCD4を導入したメサンギウム細胞において、上記サイトカイン刺激による変化にどういった影響を与えるか、細胞増殖、アポトーシス、細胞外基質増加をふくめ検討する。同時に、p38、mTOR、ERKといった腎炎にみられる細胞増殖、アポトーシスに関わるシグナル伝達経路と細胞外基質産生との関連を評価、PDCD4の細胞病態特異的役割を解析する。 また、すでに同定している尿中のmicroRNAマーカー候補因子を使用して、PDCD4の発現増加が見られる腎生検患者の尿、もしくは尿中エクソソームにおける排出量の検討を経時的におこない、その病態や病気の活動性をふくめた蛋白尿といった他の因子との比較をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度はすでに採取されたサンプルの解析やin vitroにおける分子発現の同定が主軸となり、動物の飼育費が少なくなったこと、コロナウィルスの蔓延により、学会参加が妨げられたことから残額が生じた。今年度は新たな評価項目である尿中エクソソームの検討が必要であり、ふたたび動物の飼育費が必要となってくるため、翌年度分として請求した研究費と合わせてそちらに使用する予定としている。
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