心臓サルコイドーシスは重症化すると予後が非常に悪いものの、疾患が進展しないとその存在に気づかれないため、より確実で侵襲の少ない、早期発見につながる検査法が切望されている。本研究では心臓サルコイドーシスでは心筋に炎症、線維化を生じ、結果として心臓内電気伝導異常をきたすことに着目し非侵襲的な心臓電気生理学検査である加算平均心電図ならびにホルター心電図による心拍変動解析の有用性を評価することとした。心臓における炎症は、その有用性が未知ながら他の疾患での有用性が評価されているIL-18、INFα、INF-α、高感度CRP、PTX-3、尿中8-OHdG、可溶性ST-2により評価する。これらを心臓サルコイドーシスとそうでない低左心機能患者の間で比較し、心臓サルコイドーシス患者に特異的な検査項目を見出すことを目指している。 初年度のエントリーに際し、患者背景のばらつきを低減し、よりシンプルな研究とするため、対象患者を虚血性心疾患がすでに否定され、原因精査の行われていない左室機能低下症例(LVEF40%以下)のみに限定し、心サルコイドーシスと診断された症例とそうでない症例の間で、上記検査項目の結果の意義を検討する方針とした。 令和4年度末までに35人のエントリーがあった。現在ホルター心電図の解析を実施中である。令和4年度末より申請者は海外留学のため、本研究を中断しており詳細値は今後最終的な結果をもって公開するが、心サルコイドーシスと診断された症例(n=11)は、非心臓サルコイドーシス症例と比べて、炎症マーカーにおいて有意な上昇はみられなかった。これは心サルコイドーシス以外の低左心機能の原因として慢性心筋炎など炎症性心疾患が混在することや、その他サルコイドーシスとは無関係の炎症メカニズムの存在を示唆する。今後は残検体を用いた遺伝子の転写産物、プロテオーム解析などによる評価が必要と考察する。
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