研究課題/領域番号 |
19K16956
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
越智 朋子 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (60773273)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イオパミドール内包内包リポソーム / 造影剤腎症 / リポソーム |
研究実績の概要 |
生体膜の構成成分であるリン脂質で形成されるリポソームは、生体適合性の高いナノカプセルとして、遺伝子治療や抗がん剤などドラッグデリバリーシステム(DDS)として実用化されている。一方、画像診断は、医療分野において治療法決定のため必要不可欠であり、さらに造影剤を用いることでその精度は高まる。本邦では高齢者や慢性腎不全・糖尿病患者の増加が急速に進んでいるため、ヨード造影剤による腎障害が大きな問題となっている。ヨード造影剤のもつ高浸透圧性、化学毒性、疎水性が尿細管に障害を与えると考えられ、本研究ではリポソームにヨード造影剤を内包させることで、造影剤の基本的特性は維持しながら、尿細管障害を低減させることが可能となると考え、腎毒性を低減させるナノDDSヨード造影剤を開発することを目的とする。 これまでの研究で大量のヨードを含むイオパミドール含有リポソーム(Iopamidol-liposome: IPL)(イオメプロール濃度平均0.5153M)を安定して調整可能となり、また5/6腎摘出ラットに生理食塩水の経口投与による塩分負荷、造影剤投与前の絶水を行い、安定して既存造影剤による造影剤腎症モデルを作成することに成功した。既存のヨード造影剤およびIPLを投与し、血液生化学検査、尿検査、腎組織学的検査により腎機能への影響を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
未処置ラット、5/6腎摘出ラットにイオパミドール、IPLを投与し、腎機能への影響を評価した。この結果、イオパミドール大量投与群では、未処置ラット、5/6腎摘出ラットともに造影剤投与後に腎機能の悪化が見られたが、腎不全モデルである5/6腎摘出ラットにIPLを大量に投与しても腎機能への影響は見られず、イオパミドールに比べてIPLの腎毒性が低いことが示された。また、造影剤腎症の組織学的特徴とされる尿細管上皮の泡沫状変性の程度は、IPL投与群がイオパミドール投与群と比べて低く、組織学的にもIPLの腎毒性が低減していることが示された。 造影剤2回目投与後の血中・尿中のイオパミドール・イオメプロール濃度を測定した結果、イオパミドール投与群では尿中にのみ造影剤が検出されたが、IPL大量投与群では血中にも造影剤が検出され、IPLが長く血中に滞留することが示された。ただし、イオパミドール投与群より低濃度ではあるものの、IPL投与群でも尿中に造影剤が検出された。 これまでの報告によると、ヨウ素化リポソームを静脈注射した後、リポソームは主に単核食細胞系の食細胞に取り込まれ、その後尿を介してヨード造影剤が徐々に排泄されるとされている。このため尿細管内のヨード造影剤濃度の上昇が既存のヨード造影剤に比べて緩やかになり、腎障害が低減したと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果に文献的な考察を加えて論文にまとめ、投稿を予定している。また、今後臓器での描出能評価や、既存のほかのヨード造影剤のリポソーム化についても検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今後、既存の他のヨード造影剤を用いたヨード造影剤内包リポソームについても検討を予定しており、次年度として請求した助成金とあわせてこれらに充てる。
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