研究課題/領域番号 |
19K16958
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
野本 順子 国際医療福祉大学, 医学部, 助教 (30601322)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | クローン性造血 / CHIP / 白血病 |
研究実績の概要 |
加齢に伴い健常人でも造血器腫瘍と同じような体細胞性の遺伝子変異を持つ同一クローン細胞が増殖するクローン性造血(CHIP)が認められ、65歳以上の高齢者の約10%においては、白血病などに関する体細胞遺伝子変異を有するCHIPが存在し、80歳以上ではその存在は50%にも上がることがわかってきている。CHIPは骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)の発症と深く関係し、一次がん治療後の二次性AMLの発症確率が10倍以上に増加することがわかってきた。 そこで本研究では、主にAMLやAMLの前段階である骨髄異形成症候群および骨髄不全症候群を含む白血病、治療関連の二次性AMLなどの骨髄性腫瘍疾患、ならびに非腫瘍性の血液疾患を対象に、AML発症に至るまでのCHIP遺伝子変異の挙動を明らかにするため、対象症例について経時的な検体収集を行い、ゲノム解析によるCHIP関連遺伝子変異の探索と、AML発症群に特徴的なCHIPの遺伝子変異の経時的な変化を解析し、その発症や予後との関連を解明することを目的とした。 初年度から引き継いて骨髄性腫瘍患者の経時的な検体収集行ってきた。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響をうけ、経時的な検体の収集および新規症例の追加が困難となり、本研究期間中に統計学的に十分な検体数の収集は困難と判断し、骨髄性腫瘍以外の造血器腫瘍の患者検体を含めてゲノム解析を行うことを検討した。解析方法は、CIHPとして数%の低頻度な変異を検出できるよう検出感度とコスト面のバランを考え、骨髄性腫瘍患者検体については、全ゲノム解析とエクソーム解析を、それ以外の疾患に関してはエクソーム解析を行うためのwet-lab protocolおよびdry-lab protocolの再検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響をうけ、骨髄性腫瘍患者の経時的な検体の収集および新規患者の追加が非常に困難であった。また、研究代表者が医療従事者であるため、新型コロナウイルス感染症対策の業務に従事したため、本研究を遂行するための十分なエフォートを確保することが出来なった。ランニングコストの面から、現在の収集数での患者検体でゲノム解析は実施できていないが、低頻度の変異を検出するための解析系構築は整っている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までに統計学的解析に十分な患者検体数の収集ができおらず、経時的な検体の収集は今後も継続して行う。加えて、骨髄性腫瘍以外の造血器腫瘍疾患の経時的な検体を追加しゲノム解析を実施する。構築した解析系において、骨髄性腫瘍およびそれ以外の造血器腫瘍、またその他の血液疾患の腫瘍(異常)部正常部のペア検体を用いて、エクソーム解析を行う。続いて、エクソーム解析にて何らかの遺伝子異常が見られた数例の骨髄性腫瘍患者検体について全ゲノム解析を行い、コピー数変化、大規模な構造変異など網羅的に解析する。dry-lab protocolについては、当施設で構築済みパイプライン、および国内のがんゲノム検査などで使用されるアルゴリズムでの解析を行い、解析データのバリデーションをとることを検討している。 発症時に特徴的なCHIPの遺伝子変異を抽出し、発症までの変異量変化についてAML発症群と非発症群の違いを評価した後、臨床像との相関を検討し、AML発症に関わるバイオマーカーとして有用であるかを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、研究対象の患者検体収集の困難であったため、また研究者が医療従事者として新型コロナウイルス感染症対業務に従事していたため、本研究へのエフォートが十分に取れず研究が遅延しており、次年度以降に研究の中心となる次世代シーケンサーによる解析を行う。
|