研究課題/領域番号 |
19K16961
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
出居 真由美 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (40596623)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トランスアミナーゼ / ビタミンB6 / ピリドキサールリン酸 |
研究実績の概要 |
肝障害のマーカーであるAST、ALTはビタミンB6の活性型であるピリドキサールリン酸を補酵素とする。ビタミンB6欠乏状態では、ピリドキサールリン酸を添加しない日本の測定法では、血清AST、ALTが見かけ上低値となり、肝障害を過小評価する可能性がある。本研究では、ビタミンB6欠乏患者におけるピリドキサールリン酸を添加した測定系によるAST、ALT測定の有用性を明らかにすることを目的とする。 現行法(以下、JSCC法)でALT 31 U/L未満であった検体を用いて、ピリドキサールリン酸を添加した測定系(以下、IFCC法)によるAST、ALTの測定とビタミンB6濃度の測定を行った。JSCC法とIFCC法の比較において、AST、ALTともにJSCC法とIFCC法は正相関を示した(AST: r=0.91, p<0.001, ALT: r=0.81, p<0.001)。平均値の比較においてASTでは、JSCC法とIFCC法で統計学的な有意差は認められなかった(p=0.25)。一方、ALTでは、IFCC法がJSCC法よりも有意に高値であった(p<0.001)。JSCC法とIFCC法の差異について、ASTにおいては、JSCC法とIFCC法の測定値はほぼ同程度であったの対し、ALTにおいては、IFCC法がJSCC法より高値を示す割合が高く、特に血清ALT低値(10 U/L未満)の場合にこの傾向は強かった。また、ビタミンB6欠乏例とビタミンB6正常例で比較すると、AST、ALTともにビタミンB6欠乏例の方が、IFCC法がJSCC法よりも高値を示す割合が高かった。 これらの結果より、血清ALT低値の場合、JSCC法よりIFCC法が高値を示す割合が高いことが示された。また、ビタミンB6欠乏では、血清AST、ALTともにJSCC法よりIFCC法が高値を示す割合が高いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度の計画は、現行法とピリドキサールリン酸を添加した測定系によるAST、ALT値を比較すること、及び血清ビタミンB6濃度とピリドキサールリン酸添加による測定がAST・ALT値に与える影響を検討することであった。現行法(JSCC法)とピリドキサールリン酸を添加した測定系(IFCC法)によるAST、ALT値の比較については、AST、ALTともにJSCC法とIFCC法は正相関を示し、血清ALT低値の場合JSCC法よりIFCC法が高値を示す割合が高いことが示され、ビタミンB6欠乏例では、ビタミンB6正常例と比べ血清AST、ALTともにJSCC法よりIFCC法が高値を示す割合が高いことが示された。血清ビタミンB6濃度とピリドキサールリン酸添加による測定がAST・ALT値に与える影響については、サンプル数が少なかったため十分な検討ができなかった。このため、2019年度の計画はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度に得られた結果をもとに、サンプル数をさらに増やし、血清ビタミンB6濃度とピリドキサールリン酸添加による測定がAST・ALT値に与える影響について検討する。また、ピリドキサールリン酸添加による測定の有用性について、現行法及びピリドキサールリン酸添加で測定したAST、ALT値と肝障害の程度を比較し検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析対象となるサンプル数が予定より少なかったため、次年度使用額が生じた。 2019年度の未使用額分は、次年度経費と合わせて、研究遂行のために必要な、検査試薬、検査消耗品、検査委託費、および学会発表や論文投稿に関わる費用に使用する予定である。
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