研究課題/領域番号 |
19K16964
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
長谷川 拓也 新潟薬科大学, 薬学部, 助手 (80813287)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 悪液質 / セマフォリン |
研究実績の概要 |
本研究では、肺がん細胞株骨移植による新規がん悪液質モデルを使用し、栄養障害の原因となる食欲不振と代謝異常に着目して研究を進めている。本モデルでは、情動変化や骨移植による慢性疼痛も併発しており、進行がん患者の病態を忠実に再現していると考えられる。また、本モデルにおいて、神経軸索の伸長ガイダンス因子であるセマフォリンファミリーがいくつかの組織で変化していることを予備実験で確認しており、がん悪液質の治療標的として有効であるかどうか解明することが本研究の目的である。 雄性C57BL/6系マウスの大腿骨髄腔内に肺がん細胞株(LLC; Lewis Lung Cancer Cell)を移植することで、骨移植による悪液質モデルマウスを作製し研究を進めている。臨床で定義されている病期(前悪液質、悪液質、不応性悪液質)の評価基準を動物モデルに反映し、進行評価をすることで病期分類を行った。また、疼痛評価用インキャパシタンステスターIITC-600による疼痛の評価を行い、悪液質進行と疼痛発生に一定の相関が確認している。 昨年度は、これに加え高架式十字迷路や強制水泳試験などにより情動変化が起こる時期を評価に加えることで、このモデルでの病期進行と精神症状の発生時期の関連付けを行った。 また、上記の病期分類の各時期において、セマフォリンファミリー及びセマフォリンの受容体であるプレキシンファミリーの経時的変化をリアルタイムPCRにより確認した。ここで確認した腫瘍由来のセマフォリンが代謝変化に関わると想定し、腫瘍移植部位、培養細胞、培養細胞上清のマイクロアレイの結果をもとに比較検討を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症による試薬等の配送遅延に加え、動物実験室の空調の不調により研究に支障が生じてしまった。しかしながら、同時に進行していたin vitroの実験系により、本モデルにおいてセマフォリンが関与し得る代謝経路やシグナル伝達経路をいくつか絞ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
より詳細に明確化した病期分類と変動するセマフォリン分子の関係を明らかにする。in vitroの実験系により変化すると想定した代謝経路やシグナル伝達がセマフォリンの変化に関連するものかどうかも引き続き調査する。有効性が確認できたセマフォリン分子に対する細胞種特異的欠損動物を作製し、同分子の悪液質進行における機能的関与を明らかにする。
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