本研究では、肺がん骨移植による悪液質モデルマウスを作製し研究を進めている。本モデルでは、情動変化や骨移植による慢性疼痛も併発しており、進行がん患者の病態を忠実に再現していると考えられる。本モデルにおいて、神経軸索の伸長ガイダンス因子であるセマフォリンファミリーがいくつかの組織で変化することを確認しており、がん悪液質の治療標的として有効であるか解明するために研究を進めている。解析を進めたところ、症状の進行とともに数種類のセマフォリンの発現が骨格筋や脂肪組織において変化することが明らかとなった。また、セマフォリンは、その受容体であるプレキシンファミリーに結合することで、シグナルを伝達するが、組織によって結合様式が異なる。プレキシンについても骨格筋及び脂肪組織で発現量の変化を確認したことから、責任受容体がこのメカニズムに関わる可能性が示唆された。また、この現象が他の悪液質モデル(大腸がん悪液質モデルマウス)においても同様に起こっているか確認を行ったところ、共通して変化するセマフォリンとプレキシンを明らかにした。ここで明らかにしたセマフォリンを悪液質において重要な分子であると想定し、遺伝子発現ターゲティングの手法を用いて、その機能を解析している段階である。
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