研究課題/領域番号 |
19K16966
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
内村 圭吾 産業医科大学, 医学部, 助教 (00822553)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 気管支鏡 / 超音波内視鏡 / EBUS / 肺癌 / 麻酔 |
研究実績の概要 |
(1)気管支鏡検査の診断率向上に寄与する因子と合併症発症のリスク因子の探索:当院での後ろ向き研究として、超音波気管支鏡ガイド下針生検の診断率に関与すると思われる、CTで有意な腫大を認めない肺門・縦隔リンパ節におけるエラストグラフィ画像の解析を行った。CT上有意な腫大を認めないリンパ節においても、エラストグラフィの所見は90%以上の陰性的中率を示すことが分かった。 (2)超音波気管支鏡ガイド下針生検における最適な穿刺針の探索:比較対象として使用する予定であった穿刺針が新しい超音波内視鏡ではコネクタにはまらず、使用できないことが判明した。そのため、現時点では穿刺針の前向きな比較試験が行えていない。 (3)気管支鏡検査の低侵襲性を目指した麻酔・鎮静方法の確立:気管支鏡検査において患者の苦痛を最小限にするためには、医療用麻薬を併用し鎮静薬(ミダゾラム)を用いる必要がある。しかしながら、2剤を併用した鎮静法が75歳以上の高齢者においても安全であるかは報告が少ない。2018年6月から9月に当科にて塩酸ペチジンを用いて気管支鏡検査を施行した症例を対象とし、75歳以上と75歳未満の2群に分けて検討を行った。両群において、薬剤投与量、最大酸素投与量、SpO2・血圧の変動ともに差を認めず、両群において合併症、低血圧、降圧剤使用の頻度に差を認めなかった。本検討において、全身状態を含め適応を見極めれば、ミダゾラムと塩酸ペチジンを併用した鎮静レジメンを用いて、75歳以上であっても75歳未満同様に安全に気管支鏡検査が行えると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)後ろ向き研究として、診断率に関与すると思われる、CTで有意な腫大を認めない肺門・縦隔リンパ節におけるエラストグラフィ画像の解析を行い、その検討に関して論文を執筆・投稿準備中である。 (2)近年気管支鏡検査におけて新しく発売された超音波内視鏡が使用されることが多くなり、比較対象として使用する予定であった穿刺針が新しい超音波内視鏡ではコネクタにはまらず使用できないことが判明した。そのため、現時点では穿刺針の前向きな比較試験が行えていない。 (3)2018年6月から9月に産業医科大学呼吸器内科にて塩酸ペチジンを用いて気管支鏡検査を施行した166例を対象とし、75歳以上をA群(46例)、75歳未満をB群(120例)とし、背景因子、合併症、キシロカイン・ミダゾラム投与量、最大酸素投与量、SpO2・血圧の変動について後ろ向きに比較検討を行った。両群において、薬剤投与量、最大酸素投与量、SpO2・血圧の変動ともに差を認めず、B群において入院加療を要した出血を1例認めたものの、両群において合併症、低血圧、降圧剤使用の頻度に差を認めなかった。 (1)の症例に関しては予定通り集積が行えているため、(3)やや遅れている、とした。
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今後の研究の推進方策 |
(1)引き続き症例の蓄積とエラストグラフィ画像の解析をすすめ、学会発表・論文投稿を行う予定である。 (2)現時点では、新しい超音波内視鏡において、使用できる穿刺針が限られているため、症例蓄積の困難が予想される。新しい超音波内視鏡に適応可能なコネクタが商品化され次第、前向きに比較検討を行う予定である。 (3)ペチジンだけに限らず、鎮静薬・医療用麻薬の種類を変更し、比較検討を行っていく方針である。 (1)~(3)全ての研究において、更なる症例数の蓄積・データの解析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
超音波気管支鏡ガイド下針生検における最適な穿刺針の探索を行う予定であった。しかしながら、近年気管支鏡検査におけて新しく発売された超音波内視鏡が使用されることが多くなり、比較対象として使用する予定であった穿刺針が新しい超音波内視鏡ではコネクタにはまらず使用できないことが判明した。2020年度は新しい超音波内視鏡に使用可能となるコネクタが商品化する予定とのことであり、実際に穿刺針を購入し、前向きな比較検討を行う方針である。保険内で使用可能な穿刺針は一つであることから、比較する穿刺針(2万円前後)は別途購入する必要がある。65例で比較するとなると130万円が経費として必要になる。
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