リゾホスファチジルセリン(LysoPS)は,生体内で生理活性作用をもつ新規リゾリン脂質メディエーターである.本研究では,血小板の活性化に伴いLysoPSが血中に放出されることに着目し,血小板機能に対するLysoPSの役割を明らかにし,LysoPSの新しい疾患バイオマーカーとしての応用を目指すものである. 健常人ヒト洗浄血小板に各種血小板刺激物質を加え,各種リゾリン脂質を質量分析計(LC-MS/MS)を用いて測定したところ,他の多くのリゾリン脂質とは異なりLysoPSでは,トロンビン刺激と比べてコラーゲン刺激で,血小板からの放出がより顕著であることを発見した. また,糖尿病患者において血小板容積および血小板表面受容体P2Y12等の発現増加による血小板易凝集性が報告されており,臨床血液検査検体とフローサイトメトリー法とFISH法を融合させた測定系を用いて個々の血小板ごとの血小板受容体のmRNA発現量の解析を行った.糖尿病患者26名および健常者13名を対象とし,β2-ミクログロブリンを基準としてP2Y12,TXA2受容体,リゾホスファチジン酸受容体,LysoPS受容体のmRNA発現量を比較した.さらに自動血球計を用いて糖尿病患者および健常者の血小板容積指数を比較した.平均血小板容積,大型血小板比率は糖尿病患者で有意に大きかったが,HbA1cとの有意な相関は認めなかった.本研究で得られた成果をまとめた論文の発表準備を行っている.
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