研究課題
生物学的製剤やJAK阻害薬の臨床利用によって、関節リウマチ患者の治療は大きな進歩を認めた。しかし、治療反応性には個々の症例による差が大きく、十分な治療効果を認めない難治症例の存在が問題となっている。本研究では、生物学的製剤やJAK阻害を使用開始する関節リウマチ患者の治療反応性を予測する免疫学的なバイオマーカーの同定を試みた。新規治療を開始する高疾患活動性関節リウマチ患者の末梢血免疫細胞分画の網羅的な遺伝子発現データ(RNA-seqデータ)を解析し、治療開始後半年の治療反応性を予測しうる、バイオマーカー候補を探索した。治療抵抗性と最も強く関連したのは樹状細胞前駆細胞(pre-DC)遺伝子moduleであることを同定した。別個の遺伝子発現解析コホート、免疫細胞集団解析コホートでもpre-DCシグニチャー遺伝子、もしくは末梢血のpre-DC比率が再現性を持って治療抵抗性と関わっていた。臨床情報との関連解析を実施することで、pre-DC遺伝子moduleの発現亢進が関節リウマチの長期罹患と関わることを示した。遺伝子発現データとの関連解析によって、治療抵抗性と関連するpre-DC遺伝子moduleが治療反応性に関連するインターフェロン経路と拮抗的に作用することを示した。本成果は、関節リウマチ患者の治療抵抗性の免疫学的な病態解明に貢献するのみならず、関節リウマチ患者の層別化医療、いわゆる"precision medicine"の実現にも貢献する可能性がある。
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