研究課題/領域番号 |
19K16974
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
梅澤 夏佳 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (90801530)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多発性筋炎 / 皮膚筋炎 / マクロファージ / パターン認識受容体 |
研究実績の概要 |
申請者は炎症性筋疾患に対する新規治療開発に取り組んでおり、疾患モデルを用いてIL-23が新規治療標的であることを見出した。本研究ではIL-23産生を指標とした筋炎病態の解明とさらなる治療開発のため、「C型レクチン受容体(CLR)などのパターン認識受容体を介して、マクロファージから筋炎増悪に関与するサイトカインであるIL-23が産生される」ことを仮説とした。 2019年度では、筋炎患者由来の筋検体を用いて、筋組織中の単核球を対象としてIL-23、CLR、また他の表面抗原の発現を検討した。方法として、①凍結筋組織の切片に対して免疫組織染色を行う ②採取直後の筋組織から細胞を単離し、CD3+細胞、CD14+細胞についてsingle cell sorting を行い、1細胞ごとのRNA発現を検討する の2つの手法で行った。①においては、複数のCLR分子について免疫組織染色を行ったところ、LOX-1を発現する単核球が見られたが、IL-23を発現する単核球と必ずしも一致していなかった。表面抗原についてはLOX-1陽性細胞でCD68陽性を認めた。②おいては、single cell sorting を複数回行い、RNA発現解析の途中である。 また、生体におけるマクロファージでのIL-23誘導因子は不明のため、培養系において筋炎病態を再現することも目的の一つである。マクロファージを培養してCLR等を介した刺激でIL-23の産生誘導を試みた。既知のCLRリガンド単剤を用いた刺激ではIL-23の産生は確認されなかったため、今後いくつかの刺激分子の併用など条件検討が必要である。 初年度であり学会での成果発表には至らなかったが、情報収集のために日本リウマチ学会に参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は初年度であり、筋生検検体を用いた免疫組織染色ならびに筋生検検体からのsingle cell sorting が主な目的であったため、概ね当該年度で予定された計画について進めることができた。特に、筋生検の実施からsorting までのプロトコールについては、細胞の条件を維持するために筋生検の実施から検体処理、またソーティングまでのタイムコースを綿密に用意する必要があった。重ねて条件検討した結果、当該年度でsorting した検体をシークエンスに提出することができた。 免疫組織染色での結果については、当初の予測に反してCLRの発現が限定的であったが、発現が確認されたLOX-1についてはこれまで筋炎での関与について報告がない分子であり、その生物活性について検討を行う方針である。培養系でのIL-23誘導条件検討については、実験は進めたものの、当初の予測通りの結果は得られなかったため、当該年度の結果を踏まえて次年度以降の計画を立てる方針である。
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今後の研究の推進方策 |
免疫組織染色によるCLRの発現検討については当初の予測よりもCLRの種類や発現細胞数も限定的であったため、他のパターン認識受容体についても広く検討していく予定である。また、リガンドとなるDamage associated molecular patterns(DAMPs)の発現については、DAMPsのうちのいくつかについては炎症性筋疾患との関連での既報があるが、その作用機序についての詳細は不明である。既報のあるDAMPsの発現についても改めて検討することでどの受容体を介する作用が考えやすいか判断しやすくなるため、DAMPs、すなわちパターン認識受容体の発現だけでなくそのリガンドの発現についても検討していく。 培養系でのIL-23誘導については、単一の刺激ではなく複数の刺激を行うか、筋管細胞由来のホモジェネートなど筋管細胞とマクロファージの相互作用を検証できる系をすすめる。 single cell sortingした細胞のシークエンスについては現在データ解析の段階にあるため、その結果からプロトコールの改良の必要性を検討する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養系でのマクロファージからのIL-23誘導実験に使用予定の試薬を購入予定であったが納品が期日を過ぎることが判明したため当該年度で購入ができなかったため。 次年度において当該試薬を購入して実験を進める。
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