研究代表者らは、千歳市の3つの町内会館にて65歳以上の一般高齢者の参加者を募集し、週3回4週間のマインドフルネスを実施した。さらに介入前後で、認知機能検査(MoCA-J)と採血を実施した。 その結果、認知機能(MoCA-J)の総得点が、マインドフルネス介入前後で増加していた。特に、視空間実行系の項目において、その点数の増加がみられた、 また参加者の血液から、ニューロン由来エクソソーム(NDE)を単離し、各種microRNA(miRNA)を測定したところ、miRNA-29cの発現が介入前後で増加していた。さらにmiRNA-29cがターゲットとするDNMT3A・DNMT3B・BACE1のNDE中の遺伝子発現を調べたところ、それらの発現が介入前後で低下していた。 以上から、miRNA-29cの増加が、DNMT3A・DNMT3B・BACE1の発現を抑制していたと考えられた。その仮説を確かめるため、ルシフェラーゼアッセイを行ったところ、miRNA-29cがそれらの発現を抑制することが、HEK239細胞を用いた実験で確認された。 次に、miRNA-29cの増加が、脳内にどのような変化をもたらすかを検証するため、miRNA-29c mimicをアルツハイマー型認知症モデルマウスに脳室内投与した。その結果、マウスの認知機能障害が抑制され、また海馬におけるDNMT3A・DNMT3B・BACE1の発現低下が確認された。組織学的検索では、海馬におけるアミロイドβの発現に変化は見られなかったが、神経細胞死が抑制されていることが明らかとなった。この神経細胞死の抑制については、DNMT3A・DNMT3Bの低下による効果だと考えられた。 以上から、マインドフルネスは脳内のニューロンのmiRNA-29cの発現を増加させ、神経細胞死を抑制することで、認知機能を向上させると考えられた。
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