本研究は、冠動脈壁ずり応力(WSS)の解析が可能な数値流体解析モデル(CFD)を開発し、石灰化結節病変の形態、壁ずり応力、内皮障害、血小板活性の関係を明らかにし、末期腎不全患者における冠動脈イベント発症機序を解明することを目的とした。2019年度は生体内での石灰化結節病変の診断アルゴリズム開発を行った。具体的な方法は、急性心筋梗塞症例に対して、冠動脈血行再建術治療時に光干渉断層法(OCT)、ならびに近赤外線スペクトロスコピー法(NIRS)を用いた冠動脈責任病変における組織形態の評価を行った。上記の異なる特性をもつ血管内イメージングデバイスを用いることでより正確な診断アルゴリズムを開発した。急性心筋梗塞の成因の一つである石灰化結節を正確に生体内で同定するアルゴリズムの作成に成功した。上記内容を循環器雑誌JACC imgに投稿した。2020年度は、上記アルゴリズムを通して、急性心筋梗塞の成因として重要である石灰化結節の冠動脈形態性状ならびに組織性状を同定した。さらには、微小循環障害の影響を評価する目的で、急性心筋梗塞に対して心臓MRI検査を施行し、脂質含有量が微小循環障害の発生に強く影響することを同定した。上記内容を循環器雑誌Eurointerventionに投稿した。2021-2022年度は、上記アルゴリズムを通して、石灰化結節を起因とする急性心筋梗塞症例の予後を追跡した。上記の結果、脂質含有量に富んだ石灰化結節症例の予後は不良であることを学術誌Scientific Reportに投稿した。2023年度は急性心筋梗塞症例の非責任病変を対象に石灰化病変と非石灰化病変における組織性状の差異を検証し、石灰化病変、特に石灰化結節の発生に及ぼす因子を考察した。上記内科を現在、学術誌に投稿している。
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