研究課題/領域番号 |
19K16988
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
澁田 樹 国際医療福祉大学, 福岡保健医療学部, 助教 (20799192)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨髄異形成症候群 / RNA修飾 |
研究実績の概要 |
骨髄異形成症候群(Myeloid Dysplastic Syndrome, 以下MDS)は60歳以上の高齢者に多く見られる疾患であり,高齢化が進む我が国では近年増加傾向にある。MDSでは様々な染色体異常,遺伝子発現異常が見られ,近年では核酸の化学修飾に関与する酵素の遺伝子に高頻度に変異が生じていることが報告されている。これらの酵素はDNAだけでなくRNAの修飾にも関与すると考えられているが,精度良くRNA中の塩基修飾異常を検出することが困難であったため解析が進んでいない。近年では,次世代シーケンサーの発展および核酸へのダメージの少ない塩基修飾解析手法が開発され,RNA修飾と各種病態との関連について詳細な研究が可能となってきている。本研究においては,MDSにおけるRNA修飾異常を検出・解析し,病態進展メカニズムの解明および新規診断法・治療法の開発を目指している。 今年度はMDS患者由来の株化細胞と健常人ボランティアのCD34陽性細胞を用いてMinIONによるDirect RNA sequenceを実施し,結果を比較することでメチル化シトシンの分布異常が見られる遺伝子とその遺伝子内位置を特定した。また3'非翻訳領域における修飾状態の違いの解析,これと合わせてmiRNAの網羅的解析を実施し,RNA修飾とmiRNAによる発現制御の関連について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Direct RNA Sequenceにより腫瘍化や細胞分化・成熟に関与する遺伝子の数種について,CD34陽性細胞とMDS由来株化細胞とでメチル化シトシンの分布の差が確認された。同時に各細胞内におけるmiRNAの発現の違いについても解析を進めており,miRNA発現制御とRNA修飾の関連を調べている。メチル化アデノシンについては解析プログラムの調整が必要であり,現在解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は2019年度に得られた知見からMDS由来の細胞中でRNA修飾が細胞機能に与える影響を中心に基礎的な検討・解析を実施する。また今回使用しているMDS由来の細胞はIL-3非依存性に増殖できる、あるいは分化能を欠く派生株が得られるため病態進展に伴うRNA修飾の変化も検討する予定である。 具体的実験内容としては各細胞へのmiRNAの強制発現,免疫沈降によりmiRNA-mRNA複合体を回収しmiRNA結合部分におけるRNA修飾の解析,RNA修飾酵素への変異の導入による修飾酵素の機能解析を予定している。 また再来年度は臨床検体での解析を予定しており、隣接する高木病院および関連病院である福岡山王病院からMDS患者末梢血検体を得るため倫理審査を受け準備を整える。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の直接経費予算は130万円となっているが,次年度はタンパク機能および細胞機能解析の実施,さらに確認のため複数回の次世代シーケンス解析を行うことで予算が不足することが見込まれるため今年度分予算約20万円を次年度に繰り越した。特に次世代シーケンス解析用のフローセルは10万円/個と高額であり,使用期限は短く再利用回数も少ないため主に本製品の購入に充当する。 また参加予定であったNGS関連の技術講習会がCOVID-19の拡大に伴い中止になったことで,想定よりも残額が多くなった。次回開催時に参加予定のため当該予算を次年度に繰り越すことでこちらも予算上大きな問題は生じない。
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