研究実績の概要 |
骨髄異形成症候群(Myeloid Dysplastic Syndrome, 以下MDS)は60歳以上の高齢者に多く見られる疾患であり、高齢化が進む我が国では近年増加傾向にある。MDS では様々な染色体異常、遺伝子発現異常が見られ、近年では核酸の化学修飾に関与する酵素の遺伝子に高頻度に変異が生じていることが報告されている。これら の酵素はDNAだけでなくRNAの修飾にも関与すると考えられているが、精度良くRNA中の塩基修飾異常を検出することが困難であったため解析が進んでいない。近 年では次世代シーケンサーの発展および核酸へのダメージの少ない塩基修飾解析手法が開発され、RNA修飾と各種病態との関連について詳細な研究が可能となっ てきている。本研究においては、MDSにおけるRNA修飾異常を検出・解析し、病態進展メカニズムの解明および新規診断法・治療法の開発を目指している。 今年度はMDS由来の細胞を標的、その他の白血病細胞を対称群としてRNA修飾酵素であるNSUN2の解析を実施した。shRNAを含むレンチウイルスベクターによりNUSN2 mRNAをノックダウンし、細胞増殖能、薬剤感受性の変化を解析した。また正常ヒト末梢血中の白血球を分画採取、さらにCD34陽性細胞を購入し、NSUN2 mRNAの発現変化を観察した。顆粒球系細胞においては細胞増殖能とともにNSUN2 mRNAの発現が増加し、shRNAにより発現量を低下させると増殖能も低下した。NSUN2 mRNAはMDSでの治療・診断の標的となることが示唆された。
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