研究実績の概要 |
片頭痛患者の一部ではストレス、生活習慣、天候の変化など何らかの頭痛発作のトリガーを有している。本研究では片頭痛のトリガーの調査を行い、その一部については片頭痛の動物モデルである皮質拡延性脱分極(Cortical Spreading Depolarization, CSD)を用いて科学的な検証を試みる。片頭痛のトリガーについて総合的な解明を行い、最終的には患者QOLの向上を目指す。本課題に関連した次の5つのプロジェクトについて取り組んだ。 1. 慶應義塾大学病院頭痛外来に通院中の頭痛患者について、約50項目の頭痛のトリガー候補について調査を実施、2022年度は調査結果について更なる解析、論文執筆作業に取り組んだ。 2. アジア人における片頭痛のトリガーについて海外の研究者と共に英文総説を責任/最終著者として執筆、投稿した。2000年以降にアジアから発表されたトリガーに関する研究結果をまとめたところ、①欧米と同様に「ストレス」や「睡眠」の報告が多いこと、②アジア内でも地域ごとに特徴があり、日本を含む東アジアからは「天候」、西アジアからは「食事」に関連する報告が目立つことが明らかとなった。 3. 2021年度にはCOVID-19ワクチンと頭痛の関係についての調査を実施、国際頭痛学会誌へ報告した(Sekiguchi K et al.Cephalalgia 2022)。その後、COVID-19ワクチン後に群発頭痛を発症した症例を経験しており、台湾の頭痛専門の先生方と共同でCase Seriesを執筆、投稿した。 4. 寒冷刺激、甲状腺中毒症などと頭痛の関連について、第50回日本頭痛学会総会にて報告した。 5. 喫煙が片頭痛に及ぼす影響について、CSDモデルを用いた検証を実施している。喫煙を負荷した雌マウスにおいてはCSDが惹起されやすいことが明らかとなり、2022年度は論文執筆作業を進めた。
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