今年度は(A)ウェルナー症候群(WS)患者のコレステロール代謝を改善する物質の探索を行ったとともに、(B)WS患者でみられるコレステロール代謝破綻因子探索モデルの改良とその因子の絞り込み、(C)コレステロール代謝破綻メカニズムの探索について継続して取り組んだ。 (A)レジストリに登録されたWS患者において、コレステロール代謝に関与する物質について解析したところ、測定歴のある全例でその物質の血中濃度が異常値を示すことを確認した。その因子を培養中の健常ならびにWS皮膚線維芽細胞に添加したところ、細胞増殖過程に変化が生じることを確認した。異なる患者から作成した皮膚線維芽細胞でも同様の結果が確認でき、現在その機構について解析中である。 (B)コレステロール代謝破綻因子探索のため少量の末梢血からエクソソームを抽出したが、回収効率の差が大きく、標本数が少ないこともあり比較検討が困難であった。そこで疾患iPS細胞から分化させた分化細胞が分泌するエクソソームの回収およびその解析を先行して行うこととして、現在その解析中である。 (C)昨年度ACAT1発現を低下させコレステロール代謝破綻モデルと考えられたmiR-128過剰発現線維芽細胞の解析を実施した。過剰発現細胞は対照と比較したが複数の解析を行ったものの明確な細胞老化促進を確認できなかった。細胞内コレステロール蓄積が一定せず、遺伝子発現量の不安定性がある事や何らかの代償機構が存在する事を念頭に、モデルの調節や異なるmicroRNAの過剰発現も並行して実施した。
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