研究課題/領域番号 |
19K17007
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
蓮池 裕平 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (90838351)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 筋強直性ジストロフィー / 骨格筋障害 |
研究実績の概要 |
筋強直性ジストロフィー(DM)は、CTGやCCTGといった塩基繰り返し配列(リピート)の異常伸長が原因の遺伝性筋疾患である。DMでは変異遺伝子より転写された、異常伸長リピートをもつRNAの毒性により、スプライシング制御機構の障害を来すが、DMでみられる最も重要な症状である進行性筋萎縮の詳細な機構はいまだ解明されていない。DM患者由来筋芽細胞で筋分化障害や早期分化現象が報告されているものの、筋採取時の患者年齢や筋芽細胞誘導時の条件の違いなどのため患者由来細胞での解析には限界がある。 こうした筋分化障害や早期細胞老化現象の機序を明らかにするため、当該年度はpDWDプラスミドコンストラクトを用いて、ADER法により様々な異常伸長リピートを持つCTG繰り返し配列を合成し、C2C12マウス筋芽細胞に導入し最適なモデル細胞を構築した。筋分化の程度をfusion indexやmyogenic factor の発現解析を行い、リピート依存的に筋分化障害が生じることを確認した。一方、超伸長CTGリピート含有pLLC16コンストラクトを、MRC-5初代線維芽細胞へ導入し、senescence-associated beta galactosidase (SA-beta-gal)による細胞老化を評価した。リピート発現依存的、リピート長依存的にSA-beta-gal細胞の増加することを確認した。 本年度の研究実績にて、様々なリピート長を持つDM細胞モデルを構築し、筋分化障害、早期細胞老化現象の一端を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今までにDMにおける筋分化障害を解析する最適な細胞モデルはなく、まず最適な細胞モデル構築に着手した。pDWDプラスミドコンストラクトを用いて、ADER法により異常伸長リピートを持つCTG繰り返し配列を合成した。これをpLLC16プラスミドコンストラクト内のDMPK3’UTR配列に挿入し、C2C12マウス筋芽細胞に導入して様々な超伸長リピートを持つstable cloneを確立した。Creリコンビナーゼ処理の有無でリピート発現を制御し、筋分化の評価を行い、リピート長依存的に筋分化障害が起こることを実証した。MRC-5初代線維芽細胞へ導入し、senescence-associated beta galactosidase (SA-beta-gal)による細胞老化の評価により、リピート発現依存的、リピート長依存的にSA-beta-gal細胞の増加することを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、確立した様々な異常伸長リピートを持つモデル細胞を使用し、詳細に筋分化障害、細胞早期老化機構を検証する。 筋分化障害については、C2C12モデル細胞を用いて、RNA-seqによる網羅的発現解析、スプライシング解析を行い、責任遺伝子やスプライシング異常の同定を行う。また、細胞老化機構については、異常伸長リピートをもつMRC-5初代線維芽細胞を用いて網羅的発現解析することで、DM細胞老化機構に関与する因子の同定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、研究室既存の設備ならびに資材を使用して研究を行ったため次年度使用額が生じた。次年度以降のRNA網羅的発現解析などの消耗品購入費用に充当する。
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