研究課題
我々は脳梗塞病理変化の種間差異より着想を得て、ヒト特有の脳梗塞組織応答の追究を試み、過去に脳梗塞グリア瘢痕のアストロサイトにおける抗炎症関連蛋白ANXA1発現亢進、及びこの変化がヒト特有に生じることを発見した。本研究では、ANXA1のグリア瘢痕における密度や広がり・免疫担当細胞との位置関係やANXA1発現規定因子の調査等を通して、脳梗塞グリア瘢痕におけるANXA1の役割の探求、ひいてはヒトの脳梗塞における修復・炎症制御機構やその種間差異の究明を試みた。ヒト脳梗塞組織切片及び非虚血病変組織切片を用いた免疫組織化学的解析を実施し、アストロサイトやミクログリアの形態・機能関連分子の発現解析により、1)梗塞辺縁のアストロサイトにおけるANXA1高発現像や障害細胞突起でのAQP4/EAAT1との共局在より、虚血時の浮腫・グルタミン酸負荷応答としてANXA1発現・細胞内局在変化を呈すること、2)梗塞内部マクロファージと梗塞辺縁TMEM119陽性組織常在性ミクログリアでのANXA1発現差異(前者のみANXA1発現亢進)より、炎症担当細胞では組織起源や機能に応じてANXA1応答が異なることを示唆した。さらにT細胞機能サブセット、T細胞遊走ケモカイン・受容体の発現解析により、3)CCR7陽性ナイーブT細胞(梗塞内部・辺縁に広く分布)とCCR6陽性Treg(梗塞境界周囲に集中)の分布差異、4)梗塞内部・辺縁のミクログリア・マクロファージ(CCL19のみ発現亢進)と梗塞辺縁のアストロサイト(CCL19,20の発現亢進)でのケモカイン発現差異、5)アストロサイト内CCL20の障害細胞突起への集積かつ部分的なANXA1との共局在を見出し、ケモカイン発現・分布差異による機能サブセット毎のT細胞の空間選択的誘導、特にアストロサイト由来CCL20のTreg誘導を通した脳梗塞辺縁の炎症制御の可能性を示した。
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Cerebrovascular Diseases
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