研究実績の概要 |
我々は小児てんかん・精神発達障害患者で同定された3種類のCACNA1Gのde novo変異に対し,培養細胞を用いた電気生理学的検討を継続して行ってきた.Ala961ThrとMet1531Valは他の研究者により既に報告されているが,我々はその2つの変異に加え,病的変異の可能性のあるIle1273Pheの検討を加えて解析をした.パッチクランプによるvoltage-clamp 及び current-clamp法を用いた一般的な解析では,報告のある2種類の変異において,コントロールと比較し有意な挙動の差が認められ,既報告と矛盾しない結果であった.我々は,まだこれまでの報告では検討されたことのない,oscillationという現象についての実験を追加した.膜電位を周期的に変化させた際の最も共振する周波数を解析したところ,既知の2種類の変異において,oscillationでも差を認めた.これまでに報告のないIle1273Phe変異においては,これらの解析にて有意な差を認めなかった.カルシウムイメージングについては,patch-clampと同様に培養細胞に変異Caチャネルを発現させて行ったが,変異と野生型の間で有意な差 を検出できなかった.Ile1273Phe変異を持つ患者は既知の変異をもつ患者にくらべ,てんかんの重症度や日常生活動作の障害度などの臨床症状が軽いことを反映する結果と考えた.本研究成果はJournal of the Neurological Sciencesへ論文報告した (Kunii M et al., De novo CACNA1G variants in developmental delay and early-onset epileptic encephalopathies. J Neurol Sci. 15(416):117047, 2020).
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