研究課題
レム睡眠行動異常症患者21名(指タッピング運動で定義した軽度運動機能障害を有する群が8名、有しない群は13名)を2年間経過追跡した結果、4名が神経変性疾患を発症した。軽度運動機能障害を有する2名がパーキンソン病を発症し、軽度運動機能障害を有さない2名がパーキンソン病、レビー小体型認知症を発症した。1例では振戦発症前に同側のタッピング運動の振幅が低下、もう1例では振戦と巧緻運動障害発症前に同側のタッピング運動の振幅とclose speedが低下していた。他の2名では軽度運動機能障害の先行はなく、いずれも歩行障害や認知機能低下での発症であった。初期評価時のドパミントランスポーターシンチグラフィーでは、軽度運動機能障害を有する群では軽度の線条体の機能障害を認めていたが、軽度運動機能障害を有さない群では線条体の機能障害はみられなかった。以上より、指タッピングという簡便な方法を使用し、より変性疾患に近い一群、特に黒質線条体機能の低下を有する一群を検出できる可能性が見出された。残る2名に関しては初期評価時には軽度運動機能障害はみられていなかったため、より細かな指タッピング運動障害がないかどうか今後検討を試みる予定である。また手指だけではなく、歩行の評価を追加し、歩行の各種パラメーターと指タッピング運動パラメーターの関連性も検討を予定している。またレム睡眠行動異常症にこだわらず、神経変性疾患の早期非運動症状に着目し、複数のリスク因子を有する患者群でも軽度運動機能障害の有無を検索し、無症候性の軽度運動機能障害がないかスクリーニングも行いたい。病的意義に関しては長期経過追跡により明らかにする。
3: やや遅れている
臨床経過の追跡は行えているが、神経機能画像の追跡ができていないため、本年度評価を予定する。
軽度運動機能障害は神経変性疾患の早期徴候である可能性が高いと考えているが、指タッピングの記録方法を変えることで、より感度特異度の高い検出方法となる可能性がある。レム睡眠行動異常症だけではなく、早期のパーキンソン病患者群でも種々の手指タッピング運動を記録し、より感度の高い運動機能障害検出方法も見出したいと考えている。
所属施設の異動により研究体制の調整が必要となりました。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
frontiers in Neurology
巻: 10 ページ: 802
10.3389/fneur.2019.00802