本研究ではグリア細胞由来エクソソームによる、脳梗塞後軸索再生効果のメカニズムの解明を目指し特定のmiRNAを同定することでmiRNAによる分子病態機構を検討した。しかし十分な結果が得られなかったため、グリア細胞由来ではなく脳梗塞後全身の臓器から分泌されるエクソソームに着目し、全血血清由来エクソソームによる脳梗塞後機能改善効果を検討した。前年度の成果より、永久的middle cerebral artery occlusion(MCAO)28日後における神経徴候と運動機能はいずれも3-day-exo群と28-day-exo群においてVehicle群に比べ有意な改善を認めたため、脳梗塞周囲のperi-infarct areaにおける神経再生、アストロサイトの変化を検討したところ、pNFH、npNFH陽性細胞は3-day-exo群と28-day-exo群でVehicle群に比べ有意に増加した。一方神経障害作用を持つC3d陽性アストロサイトは各エクソソーム投与群でVehicle群に比べ有意に減少し、神経保護効果を持つS100A10陽性アストロサイトは各エクソソーム投与群でVehicle群に比べ有意に増加した。初代アストロサイト培養においてもC3d陽性A1アストロサイトはOGD群で有意に増加し、各エクソソーム投与群で減少した。S100A10陽性A2アストロサイトはOGD群で有意に減少し、3-day-exo群と28-day-exo群で増加した。以上より、3-day-exoと28-day-exoは軸索再生効果とC3d陽性A1アストロサイトの減少、S100A10陽性A2アストロサイトの増加に関連し、機能回復効果に関与する可能性が示唆された。
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