研究課題
研究者らは、脳血管障害を中心とする脳・心血管疾患において大きく多様化している経口抗血栓薬の使用実態を解明するため、「脳卒中研究者新ネットワークを活用した脳・心血管疾患における抗血栓療法の実態と安全性の解明The Bleeding with Antithrombotic Therapy Study 2 (BAT2)」を進めてきた。国内51施設が参加し、特に最近注目されている脳小血管病の影響を検討するため、定められた条件での脳MRI撮影を登録要件として2016年10月から症例登録を開始した。本研究の目的は、BAT2研究の全登録症例の2年間のフォローアップを完遂し、経口抗血栓薬と出血合併症の関係を脳小血管病の存在も絡めて解明し、診療実態に即した新たな出血合併症リスク予測の方法を開発することである。2019年4月までで5378例を登録し、当該年度で2年間のフォローアップ期間がほぼ終了した。ベースラインの臨床情報を解析し、70.2%が抗血小板療法単独、24.8%が抗凝固療法単独、5.0%が抗血小板療法と抗凝固療法の療法を受けていた。ベースラインの臨床情報を、プロトコルとともに論文化し、European Stroke Journal(2020;5:423)に掲載された。ベースラインの画像データの解析を進め、研究者と議論を進めている。さらに、BAT2の主な研究目的である出血合併症リスク予測の方法については、脳画像情報と臨床情報を組み合わせ、日本人に合わせたリスクスコアシステムの開発に着手している。脳画像情報を含めた出血リスク評価方法の開発は、世界的にも注目度が高く、詳細な解析にもとづいたリスクスコアシステムの開発を目指す。
2: おおむね順調に進展している
所期の目的である、全登録症例のフォローアップをほぼ完遂しており、また、プロトコルおよびベースラインについてまとめた論文がEuropean Stroke Journalに採択・掲載された。さらに、ベースラインの画像データについても解析がほぼ終了し、英文誌への投稿前の調整を実施している。
まずはベースライン画像について十分に解析し、重要な結果について論文化を進める。また、出血合併症の予測モデルを作成するための解析を開始し、来年度中に投稿・採択を目指す。さらに、画像データの定量的解析、他の登録研究との統合解析について模索する。
・国際学会での発表、国内学会での発表を予定していましたが、新型コロナウイルスの蔓延により参加できず、出張の必要がなくなり、旅費を支出できませんでした。・また、国際共同研究への発展も検討しておりますが、新型コロナウイルス蔓延により進めることができず、旅費、物品費を支出できませんでした。・次年度は、リモートを中心とし、解析結果を国際学会および国内学会で発表するために参加費の支出があります。解析についてもさらに進めるために、十分な機能を有する機器と解析ソフトウェアを含め物品費が必要となります。複数の研究成果について論文化を予定しており、英文校正費用、掲載料が必要となります。さらに、韓国、台湾の研究者との国際共同研究への発展を模索しており、新型コロナウイルスの状況次第では、直接会ってミーティングを実施することを考えており、旅費が必要となります。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
European Stroke Journal
巻: 5 ページ: 423-431
10.1177/2396987320960618