• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

アルツハイマー病における腸内細菌叢およびウイルス叢の網羅的メタゲノム解析

研究課題

研究課題/領域番号 19K17028
研究機関大阪市立大学

研究代表者

植松 未帆  大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (80815647)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードメタゲノム解析 / メタボローム解析 / 腸内細菌叢 / 腸内ウイルス叢 / アルツハイマー型認知症 / パーキンソン病関連疾患 / KEGG / 次世代シークエンサー
研究実績の概要

近年、腸内微生物叢が腸脳相関を介して神経変性疾患の病態に影響を与える可能性が示唆されている。本研究では、腸脳相関により腸内環境から強い影響を受けると考えられている神経変性疾患、なかでもアルツハイマー病やパーキンソン病関連疾患に着目し、これらの神経変性疾患患者の糞便サンプルにおける、細菌叢とウイルス叢のメタゲノムを健常コントロールのものと比較し、健常コントロール群と疾患群で異なる微生物叢の組成および遺伝子機能の有無を検討する。本年度は、アルツハイマー型認知症患者、パーキンソン病関連疾患患者、および高齢の健常者の糞便サンプルについて、腸内細菌およびウイルスのゲノムを抽出後、次世代シークエンサーを用いてゲノム配列を解析した。さらに、スーパーコンピュータを用いた情報解析を行い、腸内微生物叢の構成を同定した。さらに、得られた微生物の遺伝子配列について機能データベース(KEGG: Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)で相同検索することにより、代謝系経路や細菌由来アミロイドの生合成をはじめとする様々なパスウェイの機能解析を行った。一部のサンプルについて糞便のメタボローム解析を行った。これらの網羅的解析により、パーキンソン病関連疾患およびアルツハイマー型認知症において特徴的な腸内微生物叢の構成および遺伝子機能を統計学的に分析した。今後の研究の準備としては、解析により候補に挙げた疾患関連分子につき、剖検脳における分布を検討するための準備として、多重免疫電顕の手法につき検討した。また、とりわけパーキンソン関連疾患において特徴的であった細菌叢に着目し、この細菌の神経系細胞に対する影響を検討するため、疾患特異的iPS細胞を神経系細胞へ分化誘導するための条件検討を行い、将来の感染実験の準備をした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、健常者および神経変性疾患患者の糞便サンプルにおける腸内微生物叢のメタゲノムデータを相互に比較し、コントロール群と疾患群で異なる微生物叢の組成および遺伝子機能を検討することを目的としており、次のAからDの順に研究を実施することを目指した:A 神経変性疾患患者の糞便サンプルからの微生物叢の遺伝子抽出、B メタゲノムデータ解析、C 遺伝子機能解析、D 神経病理学的検討。まずAについて、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病関連疾患、およびその他の神経変性疾患の患者様、および高齢健常ボランティアの方々の糞便サンプルを募集し収集した。そして、最適化された処理によりサンプルを細菌、ウイルスの分画に分けて、遺伝子を抽出した。これらの遺伝子について、次世代シークエンサー用のライブラリを作成し、HiSeqで塩基配列を決定した。次にBについて、得られたゲノムデータの解析は、東京大学医科学研究所のスーパーコンピュータSHIROKANEを利用して行った。その結果、それぞれの疾患において、健常者データベースにみられる腸内細菌の組成とは統計的に有意に異なる腸内細菌叢の破綻(ディスバイオーシス)をきたしていることが分かった。Cについては、得られた腸内微生物叢の遺伝子からORF領域を同定し、KEGGデータベースを用いて遺伝子機能解析を行った。その結果、特徴的な細菌の生存に関わる種々のKEGGパスウェイの構成遺伝子のアバンダンスが健常者データベースと比べて統計的に有意に増加しており、一方で、有用菌の相対的な減少によって、一部の一次代謝経路を構成する遺伝子のアバンダンスが相対的に減少していることが分かった。Dについては、A~Cによって候補に挙げた疾患関連分子につき、剖検脳における分布を検討するための準備段階として、多重免疫電顕の手法につき検討した。このように、実験計画通り概ね順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

来年度はメタゲノム解析、メタボローム解析ともにサンプル数をさらに増やし、統計学的検討の信頼性を増し、疾患により特徴的な腸内微生物叢の組成および機能の変化を明らかにしていく。また、疾患特異的ヒトiPS細胞は、専用の培地や試薬を用いて、神経前駆細胞へ誘導し、さらに、中脳ドーパミン作動性ニューロンやアストロサイトへ分化誘導し、十分な条件検討により安定した実験系を樹立していく。メタゲノム解析の結果、発症に影響を及ぼしうる候補の菌を挙げ、上記により分化誘導したニューロンやアストロサイトに感染させ、細胞への影響を検討する。得られたデータについて論文化を目指して追加実験や考察を進める。また、研究成果に関して、学会等の発表を行って行く。 今後は、腸内細菌叢関連神経変性疾患群に特有の腸内細菌叢の機能変化に対応した補充戦略や、共生病原腸内細菌(パソビオント)の制御に関する革新的な治療法の創出を目指す。

次年度使用額が生じた理由

次年度は、メタゲノム解析、メタボローム解析を行うサンプル数増やす予定であるため、その解析費用が必要となる。また、iPS細胞分化誘導の条件検討のため、専用の培地や試薬が必要となる。このため、次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Parallel gold enhancement of quantum dots 565/655 for double-labelling correlative light and electron microscopy on human autopsied samples2022

    • 著者名/発表者名
      Uematsu M, Mikami K, Nakamura A, Takahashi R, Yokota T, Hirokawa K, Uchihara T.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: 6113

    • DOI

      10.1038/s41598-022-09849-8 (Accepted 23 March 2022, Published 12 April 2022) )

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi