研究課題/領域番号 |
19K17032
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立神経病院(臨床研究室) |
研究代表者 |
本多 正幸 地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立神経病院(臨床研究室), 脳神経内科, 医師 (50795432)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 自己免疫性脳炎 / 抗NODA受容体抗体脳炎 / extreme delta brush |
研究実績の概要 |
近年の文献をレビューし,自己免疫性脳炎のひとつである抗NMDA受容体脳炎について,症例ベースに診断・検査所見・治療・予後と脳波検査上の注意点などについての総説を執筆した. 抗NMDA(N-methyl-D-aspartate)受容体抗体脳炎は,2007年Dalmauらによって卵巣奇形腫に随伴する傍腫瘍性脳炎として報告された.NMDA受容体はN1サブユニットを認識するIgG抗体によって生じる自己免疫性脳炎の一つである.本疾患では補体活性化を伴う強い炎症所見は呈さず,不可逆的な組織破壊が少ないために,予後が比較的良好と考えられている.精神症状が前景に立ち,そのほか運動異常症,自律神経症状,てんかん発作,低換気などを来す.てんかん性放電が認められるのは15%程度で,初回検査では約30%で脳波上の異常がない.小児例ではびまん性ないし前頭部優位の徐波化を呈する.Schmittらはこの成人患者23名にcontinuous EEGを実施し,30.4%に低出生体重児にみられる“beta-delta complexes”と類似した波形が出現することを報告した.近年の報告をまとめるとEDBの出現率は53%とされる.典型的なEDBは律動性delta活動(1-3Hz)の各々に,20-30 Hzの速波活動が重畳する.このパターンは持続性で,発症のごく初期から脳波異常やMRI異常に先立って認められる.ほぼ対称性,全般性かつ同期性を示し,特異性に関しては,当初の報告では不明であるとされたが,症例報告レベルでNMDAR抗体陰性のGFAP astrocytopathyの小児例での報告がある程度であった. このように抗NMDA受容体抗体脳炎において,EDBは特異性は優れるものの,感度は高くない.前年度報告と併せ,くすぶり型辺縁系脳炎の病勢にvolumetryや脳波の多面的な解析が有用である可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度同様,COVID19流行に伴う長時間ビデオ脳波モニタリング症例数が著減しており,症例の蓄積が目標に届かないため.研究代表者の市中病院への異動により研究へのエフォートが大幅に低下し進捗がないため.
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今後の研究の推進方策 |
積極的な外来でのリクルートを諮り,長時間ビデオ脳波の実施困難な症例においても臨床的に疑わしければ,1時間の睡眠脳波を以て替えることで症例数増加を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19や代表研究者の異動により,k国際学会出席が困難となり,参加費・旅費の支出がなかった.また当初予定していた人謝金を支払う対象がなく,人件費については研究代表者 の労力で賄えた.
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