抗NF155抗体陽性で振戦を有するCIDP患者5名を対象に、日本光電の脳波計を用いて骨間筋に記録電極を配置し、表面筋電図検査を施行した。記録した表面筋電図検査のデータをEDFbrowserを用いてEDFフォーマットに変更後、pythonで周波数解析を行った。5名中4名で姿勢時振戦の表面筋電図が記録できた。2名では11.3±1.2Hzと比較的大きい周波数であり、残り2名では6.2±0.6Hzと比較的遅い周波数であった。この結果より、抗NF155抗体陽性の振戦には周波数の違いにより2群に分けられ、振戦の責任病巣の違いによることが示唆された。また、抗NF155抗体陽性症例で、フォローアップ中に振戦が明らかに改善した一例を経験した。血清抗NF155抗体価は振戦の改善とともに明らかに低下していた。振戦が可逆性であることを示唆する貴重な症例と考えられた。 また、研究の一環で抗NF155抗体陽性CIDP症例を下記のように電気生理学的に詳細に評価を行い報告した。IgG4抗NF155抗体陽性13名が対象。そのうち12名でblink reflexを施行した。13名で全視野刺激でチェックサイズ15分と30分を用いて視覚誘発電位を記録し、P100の潜時を計測した。結果、臨床的には、男女比は11:2、平均発症年齢は34歳で、顔面の感覚障害は3名、顔面筋力の低下は2名に認め、2名で視力が軽度低下していた。Blink reflexを施行した12例全例で何らかの異常を認めた。R1潜時は、正中および尺骨神経の遠位潜時、神経伝導速度、F波潜時と有意な相関を認めた。VEPでは10/13例(76.9%)でP100の異常を認めた。IgG4抗NF155抗体陽性CIDPでは四肢の末梢神経のみならず脳神経(視神経、三叉神経、顔面神経)にも高頻度に潜在的な脱髄を示唆する伝導異常が存在することが電気生理学的に証明された。
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