研究課題/領域番号 |
19K17037
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤井 敬之 九州大学, 医学研究院, 助教 (30822481)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗Plexin D1抗体 / 神経障害性疼痛 / 自己抗体 / 小径線維ニューロパチー / 受動免疫動物モデル |
研究実績の概要 |
2019年度、疼痛疾患における抗Plexin D1抗体の保有率の探索を行うために、原因不明のpainful trigeminal neuropathyの患者とsmall fiber neuropathyの患者を対象として、臨床研究を実施した。結果、原因不明のpainful trigeminal neuropathy患者においては、約10%に抗Plexin D1抗体が認められ、抗Plexin D1抗体は三叉神経節の小径ニューロンにも結合を認めた。原因不明の小径線維ニューロパチー患者では、対照コントロールと比較して、有意に抗Plexin D1抗体の保有率が高いことが明らかとなった。今後、陽性例と陰性例における患者プロファイル解析を進める。次に、抗Plexin D1抗体が生体内でどのような機序で疼痛を誘導しているかを評価するために、抗Plexin D1抗体陽性神経障害性疼痛患者血清からIgGを精製し、マウス髄腔内に投与する受動免疫モデル動物を用いた研究を行った。抗Plexin D1抗体陽性患者3名のIgGと健常人2名のIgGをそれぞれ7匹のICRマウスに髄腔内投与し、24時間後の機械的痛覚過敏をvon Frey試験で、熱性痛覚過敏をHot plate試験で評価した。結果、受動免疫モデルマウスの行動解析では、3名の患者IgG投与群では健常人IgG投与群と比較して有意な機械的痛覚過敏を認めた。以上の結果から、抗Plexin D1抗体は、一部の原因不明の疼痛疾患の責任抗体であるとともに、生体内において後根神経節や脊髄後角といった体性感覚神経系に結合して神経障害性疼痛を惹起する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の学術的問いであった「抗plexin D1抗体がどの疼痛疾患において原因自己抗体となっているか」、「抗plexin D1抗体が生体内でどのような機序で疼痛を誘導しているか」について、臨床研究と基礎研究を通じて、解明することができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、疼痛疾患における抗Plexin D1抗体の保有率の探索として、線維筋痛症患者を対象として、保有率の評価を進めていく予定である。さらに、抗Plexin D1抗体を髄腔内投与した受動免疫モデル動物の神経病理学的解析を進めて、行動実験結果を裏付ける病態メカニズムの解析を進めていく予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、ELISAプレートや抗体等について、当研究室で使用していたものを利用したため、使用額がおさえられた。未使用分については、次年度以降の実験を進めるにあたり、必要な試薬の購入と人件費に充当する。
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