研究課題/領域番号 |
19K17042
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
齋藤 光象 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (60516079)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アレキサンダー病 / 一次性アストロサイト病 / アストロサイト / ミクログリア / 難治性疾患 / 2光子イメージング |
研究実績の概要 |
アレキサンダー病(AxD)は、GFAP遺伝子変異を病因とする難治性疾患である。先行研究ではアストロサイトCa2+シグナル異常によってAxD病態が促進されることを見出した。また、AxDマウスのミクログリアについて調べると、ミクログリアの活性化現象と病態保護効果が確認された。この現象に関する分子病態メカニズム解明のため(1)AxD病態のミクログリア機能解析、(2)シングルセル遺伝子解析(scRNAseq)を実行した。Iba1プロモーター下にGCaMP6を発現するIba1-GCaMP6マウスおよび2光子励起レーザー顕微鏡を用いたミクログリアCa2+イメージング法の確立に成功した。さらにこのマウスとAxDマウスを交配させて新たにミクログリアCa2+シグナル解析用のAxDモデルを作成した。このAxDモデルでは対照群に比較してCa2+シグナル活性化が認められ、この活性化現象は特定の受容体拮抗薬によって抑制された。一方でscRNAseqにより、各グリア細胞のサブクラスター解析、パスウェイ解析を実行し、病態関連性のクラスターを同定し、特徴化した。これらデータを基にしながらAAV脳局所注射によるATPイメージングを活用した結果、ある細胞種が関連する組織内ATP増加メカニズムを同定することに成功し、AxDミクログリアCa2+シグナル活性化要因として特定するに至った。さらにAxDミクログリアCa2+活動の病態意義を検討するため先述の受容体拮抗薬の投与実験を行ったところ、AxDマウス脳組織の病態増悪を示した。すなわちAxDミクログリアCa2+活動は病態保護作用を有することが判明した。アストロサイト・ミクログリアの相互作用が関連するAxD病態機構の一端を解明し、重要成果が得られた。この特定の受容体を標的としたミクログリア介入操作手法は、将来の治療開発応用に連結すると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初やや遅れている面もあったが、途中から全体的な研究進捗が得られた。現在、論文化に向けた作業を中心に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
AxD病態におけるミクログリアCa2+活動の病態保護的役割についてさらに理解を深めるために、受容体拮抗薬投与によるミクログリアCa2+活性化抑制下にあるAxDマウスにおいて(1)神経機能活動の影響変化、行動パターン変化を調べる、(2)網羅的遺伝子発現変化の解析を実行する。以上、これらの計画を策定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大状況に伴い、研究計画の遂行に遅延等の影響が生じたため。 次年度計画では、アストロサイト・ミクログリア同時の機能イメージング法を確立すること、そしてさらにモデルマウスでこの実験系を実行することで、コントロール群との比較において新たな現象変化を検出すること、を主な項目として挙げている。
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