研究課題/領域番号 |
19K17043
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
塩田 智 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 医員 (70837062)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経難病 |
研究実績の概要 |
神経難病の代表疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭型認知症(FTD)は、その原因遺伝子が多岐に渡ることから、残念ながら分子生物学的な病態が未だに明らかではなく、有効な治療法が無い。近年、ALS/FTDに共通した病態を有する遺伝子異常として、C9orf72遺伝子の異常な繰返し配列(GGGGCC)n)が報告され、ALS/FTD発症の最も頻度の高い原因であることから非常に注目されている[DeJesus-Hernandez et al. Neuron 2011; Renton et al. Neuron 2011]。 C9orf72遺伝子異常を伴うALS/FTD(C9-ALS)の患者由来の細胞では、PR(プロリン・アルギニン)ポリペプチドを含む複数の病的な毒性ポリペプチドが作られることが分かってきた[Zu et al. PNAS 2013; Mori et al. Science 2013]。これまでの研究から、毒性ポリペプチドの標的は、スプライシング[Kwon et al.Science 2014]や中間径フィラメント[Lin, Mori et al. Cell 2016]や核膜孔[Shi, Mori et al. PNAS 2017]であることが明らかになっている。本研究計画においても毒性ポリペプチド処理後の細胞の変化について、免疫染色やウェスタンブロットなお組織学的、生化学的解析を行っている。 細胞骨格や接着斑の変化と、これによって誘導される細胞自体のフェノタイプの変化を中心として解析を行った。PRポリペプチドを細胞に加えることによって細胞の表面が硬化することや、細胞が培養基質からはがれることが困難になることを明らかにした。 また、毒性ポリペプチドの新規標的分子の同定を行う。細胞膜に局在するタンパク質を選択的に同定することを目的として、APEXⅡ、TurboIDを使用したシステムの構築を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では前年度で、毒性ポリペプチド処理後の細胞の変化について、免疫染色やウェスタンブロットなお組織学的、生化学的解析を継続的におこなった。 前年度に毒性ポリペプチドによって細胞骨格の変化が誘導されることを明らかにしており、当該年度では、免疫染色や画像解析によっ細胞骨格に結合する接着斑分子の変化を明らかにした。また、これらによって誘導される細胞表面の弾性の変化、メカニカルストレス応答の変化など、毒性ポリペプチドが細胞のホメオスタシスに与える影響を明らかにしつつある。
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今後の研究の推進方策 |
細胞骨格は細胞の生命維持に重要であり、この変化を誘導する経路の同定やこれらの変化が細胞の機械的特性に与える影響を明らかにすることは毒性ポリペプチドの生物学的特性を明らかにする点において重要である。 引き続き、細胞の毒性ポリペプチドの新規標的分子の同定を目標として、細胞膜に局在するタンパク質を選択的に同定することを目的として、APEXⅡ、TurboIDを使用したシステムの構築を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は免疫染色を行って取得した画像データの解析が中心であり、残額が生じた。今年度計画に必要な抗体の購入に充てる予定である。
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