研究課題/領域番号 |
19K17047
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
大垣 光太郎 順天堂大学, 医学部, 准教授 (20459035)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 遺伝子 / リソソーム病 / 神経科学 / 次世代シーケンサー / 脳神経内科 |
研究実績の概要 |
近年リソソーム病(Lysosomal storage disorders: LSD)の1つであるゴーシェ病を引き起こすGBA遺伝子が、パーキンソン病(PD)に最も重要なリスク感受性遺伝子の1つとして報告され、GBAの病態に沿ったプレシジョンメディスンの開発が進められている。2018年欧米の国際共同研究によって、54のLSD原因遺伝子が解析された。1156例のPDを解析したDiscovery cohortではPDの56%が最低1つの病的変異を有しており、21%は複数の病的変異を有していた (Robakら, Brain.2018)。この結果は、[PDはリソソーム病である] という可能性を示したが、他の人種で検証は行われていない。LSD原因遺伝子の1つであるGBAの遺伝子変異陽性率は日本人で高く (日本人20倍、白人5倍のオッズ比) (Mitsuiら、Archives of Neurology.2009)、網羅的LSD遺伝子解析の日本人データは重要な知見を見出す可能性がある。当科DNA bankでは家族性PDの75%は原因遺伝子未同定だが、その多くがLSD原因遺伝子を有している可能性を考慮し、本課題を立案した。既に、申請者在籍研究室からGBAとは別のLSD原因遺伝子であるARSA,PSAP遺伝子変異がGBA同様にPDのリスク遺伝子として既に報告されている (Leeら、Brain.2019) (Ojiら、Brin .2020)。今回申請者は日本人家族性PDの大規模サンプルにて54のLSD原因遺伝子を次世代シーケンサーを用いて網羅的に解析し、更なる新規PD関連遺伝子を単離し、PD病態解明を目指すことをゴールとする。 現在、328例の日本人・家族性PDサンプルにおいて54のLSD原因遺伝子のターゲットリシーケンスを開始しており、今後のデータ解析・統計解析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
54のリソソーム病(Lysosomal storage disorders: LSD)遺伝子のうち、GBA遺伝子を除く53の遺伝子をターゲットリシーケンス解析するためのプローブをデザインした。現在、328例の日本人・家族性PDサンプルと、130例のコントロールにおいて54のLSD原因遺伝子のターゲットリシーケンスを開始しており、今後のデータ解析・統計解析を進めていく。 GBAはpseudogeneのGBAP1との相同性が高く、GBAP1上には多数の変異が存在することが知られており、ターゲットリシーケンスでは変異解析が困難である。通常、サンガーシーケンスを行う場合、GBAP1を増幅しないprimer designで複数回のPCRが必要になる。今回我々は、GBAの多数例を効率よく解析するため、ロングリードシークエンシング技術の1つであるナノポアシーケンサーを用い、GBAの多数例解析を開始した。現在データ解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
54の遺伝子解析から得られた遺伝子情報の中から、家族性PD患者群に共通する遺伝子変異を抽出し、パブリックデータベースの遺伝子情報などを用いフィルターにかけ、新規原因遺伝子候補・感受性遺伝子候補を絞り込む。 原因遺伝子探索においては、家系内遺伝子解析なども追加し、co-segregation studyを進める。候補遺伝子において、追加の家族性PD群・孤発性PD群・in-houseコントロール群のサンプルを用い、大規模スクリーニングを行い、変異陽性家系・変異陽性患者を抽出し、病的意義の確認を進める。原因遺伝子が単離された場合は、その臨床像や可能であれば病理像の関連性や孤発性PDに与える同遺伝子変異の頻度・影響力などを明らかにする。感受性遺伝子候補については、Gene burden testなども含めた統計学的解析で発症に関与する可能性を確認する。 新規原因遺伝子候補・感受性遺伝子単離後は、細胞実験・動物実験などの機能解析を進めリソソーム機能障害を治療ターゲットとした創薬を目指すのみならず、リソソーム病のような代謝性疾患ではenzyme replacement therapyが可能でありプレシジョンメディスンの開発を目指すことが可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究を行なっている国立遺伝研究所との調整で、同研究所に試薬を郵送するタイミングが、2019年度から2020年度に変更となった。DNAサンプルは2019年度に郵送済みであり、解析はすでに始まっているため、本研究の進行には問題がない。同研究所において、先行研究における試薬が十分に足りているとのこと。
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