研究課題
HTLV-1関連脊髄症(HAM)は、HTLV-1感染者の約0.3%のみに発症する希少神経難病である。多くの感染者は生涯無症候であることや、動物モデルがないことから、感染初期のウイルス免疫学的動態や、HAMの発症メカニズムは不明な点が多い。我々はHTLV-1陽性ドナーからの腎移植によって新規に感染したレシピエントは移植後早期に極めて高率にHAMを発症することを見出し、腎移植における特殊な環境が感染初期のHTLV-1制御を困難としHAMの発症を促進している可能性に着目し、本研究を計画した。本研究は、腎移植におけるHTLV-1新規感染という特殊環境がウイルス動態や免疫応答に与える影響について解析し、HAMの発症機構の解明につながる情報を得ることを目的としている。当初の計画では、HTLV-1のサル類縁ウイルスであるSTLV-1をニホンサルに感染させるモデルを用いて、感染早期のSTLV-1の動態・宿主の免疫応答、それらに対する免疫抑制療法を含む腎移植の影響を解析することを予定していた。サルの確保と感染細胞株の感染効率に問題が生じたため、初年度はニホンザルからカニクイザルへの変更、感染効率のよい感染細胞株の検索・確保を行った。結果として、より確保の容易なカニクイザルを用いた、より感染効率の良い感染細胞株による研究継続が可能となり、よりよい研究環境を構築することができた。
3: やや遅れている
本研究では、HTLV-1のサル類縁ウイルスであるSTLV-1をサルに感染させるモデルを用いて、感染早期のSTLV-1の動態・宿主の免疫応答、それらに対する免疫抑制療法を含む腎移植の影響を解析することを計画していた。以下の2つの問題が生じたが、適切に対応し研究を継続するよい環境を整えることができた。1.当初、STLV-1の自然宿主であるニホンザルを実験に用いることを計画していたが、十分な匹数を確保することが困難となった。動物実験の経験が豊富な研究施設や企業を調査・協議し、カニクイザルで研究を継続ことが可能となった。2.カニクイザルもSTLV-1の自然宿主であるが、STLV-1感染細胞株を投与することによる感染効率が低いことがわかり、より感染効率のよい細胞株を探索した。結果として、カニクイサルに感染効率の良いHTLV-1感染細胞株を同定し、使用できることとなった。同細胞株がカニクイザルに効率よく感染することを既に確認している。
初年度は上記の問題が生じたが、適切に対応することにより、よい環境を整えることができた。今年度は、HTLV-1感染カニクイザルモデルを用いて、当初の計画通り、以下の解析を継続していく。1. HTLV-1感染初期のウイルス動態・免疫応答の解析:(1)感染初期のHTLV-1感染拡大の機序に関する解析。ア. 感染細胞(プロウイルス量)の増加速度、イ. 感染細胞の増加様式(感染細胞増殖と細胞間新規感染の感染拡大への寄与度)の解析。(2) 感染初期のHTLV-1に対する免疫応答に関する解析。ア. STLV-1に対する抗体産生に関する解析、イ. 細胞傷害性T細胞(CTL)の解析、ウ. サイトカイン反応の解析。2.HTLV-1の増殖および抗HTLV-1免疫に対する免疫抑制療法の影響に関する解析:免疫抑制薬を投与したHTLV-1感染細胞株感染モデルの血液検体を用いて上記1(1)・(2)と同様の解析を行い、免疫抑制療法の影響を明らかにする。
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