Von Willebrand Factor(vWF)は血小板凝集に関与するタンパク質で、血中でvWFは多量体で存在するが、ずり応力により伸展しADAMTS13により切断され低分子化し易出血性を呈する。vWFと脳卒中の転帰との関連性について注目した。 研究のデータ収集を行うにあたり、既報告では透析患者の脳卒中症例における転帰や重症度と関連する因子について、血液学的検討を行った研究が乏しいことが判明したため、透析患者における血液検査所見を含めた転帰不良に関連する因子を検討することが必要となったため、入院時の血液検査所見と脳卒中の重症度や、転帰と関連する因子についての検討を行う方針とした。当院での過去10年の維持透析中の脳卒中症例を後方視的に観察し、脳梗塞症例147例、脳出血症例78例を元に、血液検査所見と転帰や重症度と関連する項目を調査したが、脳出血・脳梗塞症例それぞれにおいて、血小板数、PT-INR、APTT値などの凝固・線溶系項目は、転帰や重症度に関連していなかった。また、易出血性に関連する、抗凝固薬、抗血小板薬についても、転帰との明らかな関連を認めなかったため、血液凝固異常、血栓性素因所見の、転帰への影響は小さいと考えられた。重症度に関与する因子を脳梗塞、脳出血症例それぞれで検討したところ、脳梗塞症例において、来院時のNLR (neutrophil to lymphocyte ratio)やCONUT score、PLR (platelet to lymphocyte ratio)など、栄養や慢性炎症と関連する項目が転帰不良と関連していることが判明した。一方で、脳出血症例においては、慢性炎症、低栄養状態は転帰不良に影響せず、発症前の透析中の血圧変動が転帰に関連し、脳出血における血圧管理の重要性が示唆された。血液凝固異常や止血異常の転帰への影響は小さいと考えられた。
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