研究実績の概要 |
大規模な自然災害や凶悪犯罪といった強いストレスにより引き起こされる心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、長期的に心身の不調をきたすものであり、社会的問題となっている。PTSDを発症させないためには、できるだけ早いタイミングでの治療・介入が効果的であることは知られているが、そのメカニズムは明らかになっていない。本研究は強いストレス経験が恐怖反応の増強を形成する内分泌・免疫系メカニズムに注目し、PTSDモデル動物を対象に、ストレス経験時、経験後の微細な身体内の変化が恐怖反応増強を引き起こすメカニズムを解明することを目的とする。行動的変化に加え、小動物用核磁気共鳴画像法(MRI)を用いて同一個体の脳形態変化をストレス前後で比較することで、強いストレスによって生じた生体の異常を可視化する。これらにより、PTSDの新規バイオマーカーおよび、効果的な治療法の開発貢献を目指す。 本年度は、強いストレスを受けた後の行動と脳画像の解析を行った。PTSDモデル動物として、採択者のこれまでの研究で作成した手法を用いた(Ryoke, R., Yamada, K., & Ichitani, Y. (2014). Physiology & Behavior)。PTSD動物モデルに、電撃と水泳ストレスを与えた。恐怖記憶の形成と持続をみるために、弱い刺激を用いた文脈恐怖条件づけを行った。PTSDモデル作成の前後に小動物用MRIを用いて脳形態画像を取得した。PTSD動物モデルにおいて、恐怖記憶の増強が見られ、脳形態に変化がみられた。恐怖記憶の強さと相関のみられた脳部位の解析を行った。引き続き、血中のストレス関連ホルモンおよびサイトカインの測定において、効率的に安定した定量値を得るための検討を行うこととした。
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