研究課題/領域番号 |
19K17056
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池亀 天平 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00836736)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / DNAメチル化 / 統合失調症 / レポーターアッセイ / コモンマーモセット |
研究実績の概要 |
本研究ではヒトの情動行動に関与するセロトニントランスポーター遺伝子(SLC6A4)のDNAメチル化状態が、統合失調症患者においてどの様に変化しているかを大規模な末梢血試料を用いた症例対照研究により検証する。 ①統合失調症患者-健常者間におけるSLC6A4のDNAメチル化状態の比較:統合失調症患者440名と健常者488名の末梢血試料からゲノムDNAを抽出し、双極性障害患者の末梢血由来リンパ芽球より同定したSLC6A4のプロモーター領域の一部のDNAメチル化部位(CpG3)のメチル化率を測定した。その結果、男性統合失調症患者では男性健常者よりも有意な高メチル化状態である事を見出した。 ②抗精神病薬投与-非投与コモンマーモセット間におけるSLC6A4のDNAメチル化状態の比較:抗精神病薬・リスペリドンを長期投与(28日間)したコモンマーモセット群(3匹)と対照群(3匹)の末梢血試料から抽出したゲノムDNAを用いて、コモンマーモセットSLC6A4でも保存されているCpG3のメチル化状態を測定した結果、リスペリドン投与群で有意なメチル化率の低下を認めた。 ③培養細胞を用いた遺伝子発現解析:DNAメチル化がSLC6A4の転写活性に与える影響を検証するため、CpG3の周辺配列(CpG3 sequence)を組み込んだレポーターコンストラクトを人為的メチル化/非メチル化処理した2種類のコンストラクトを作成した。 以上より、CpG3は男性統合失調症患者で高メチル化状態にあり、この高メチル化は抗精神病薬の影響でないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点で研究は当初の研究計画通り進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は前年度に作成したレポーターコンストラクトを用いたルシフェラーゼアッセイによるメチル化の影響を確認する。更に、DNAメチル化のデータと脳構造MRI画像を用いた脳体積との相関解析を行い、論文化に進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画よりも実験結果が順調に得られたことから、想定していた消耗品等の物品費が抑えられたことによる。 今年度はレポーターアッセイに物品費が必要となることが確実なため、助成金を集約的に使用し十分な結果を得ることを計画している。
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