研究課題/領域番号 |
19K17067
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
原田 朋子 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (10779432)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 神経性やせ症 / 再栄養 / 再栄養症候群 / 血糖変動 / 摂食障害 |
研究実績の概要 |
極度の低体重の神経性やせ症(Anorexia nervosa; AN)の治療において栄養投与(再栄養)初期に起こり得る、時に致死的な状態となる再栄養症候群(Refeeding syndrome: RS)に関連する因子について、特に血糖変動や投与する栄養素の割合の関連に着目して検討することで、日本人AN女性患者におけるRSのリスク因子を明らかにすることを目的として研究を行なっている。症例18名の時点での途中結果は以下の通りであった。 全症例で重篤な再栄養症候群に至った症例はなかった。 持続血統測定について、低炭水化物食群や普通食群などの栄養負荷、病型、年齢、罹病期間、BMIなどの違いを踏まえて検討したが、症例ごとの差が大きく一定の傾向などは明らかとはならなかった。しかし、2週目に低血糖状態となっている症例が多く見られたこと、考えられていたよりも多くの症例で夜間低血糖が持続していたことなどが明らかとなった。この結果からは、注意して血糖コントロールを行うことことや、より治療が進んでいる2週目にも低血糖のリスクがあり厳密な観察を続けることの必要性が示唆された。 また、低炭水化物食群と普通食群にわけての、背景比較では、摂食制限型および過食・排出型と行った下位分類の割合、入院時年齢、罹病期間、体型については、低炭水化物食群と通常食群でほぼ同等である。2週間の血糖変動では、食前-食後の血糖値の差の中で最も差が大きかったもの(最大血糖差)は、低炭水化物食群で95.1±19.3mg/dl、普通食群で123.0±41.3 mg/dlと低炭水化物食群で血糖変動差が、小さい傾向にはあった。再栄養症候群徴候の発生の有無についての検討では、低炭水化物食群は再栄養症候群徴候があったものが71%、なかったものが29%、普通食群で再栄養症候群徴候があったものが45%、なかったものが55%であった。今後も症例の蓄積を得て、統計解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
入院AN患者は年間30~40人程度を見込んでおり、その程度の患者が入院した。対象となる患者のうち約8割は研究に同意し、研究観察期間途中で退院するなど研究から外れる患者もいたが、概ね目標数の患者の協力が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き症例の蓄積を行い、目標症例数に達した段階で、予定していた主要評価項目である低リン血症について、入院後再栄養開始後から低リン血症発症までの時間に対し、炭水化物量(投与カロリー・摂取状況を踏まえた炭水化物量)・血糖値・年齢、BMIを説明変数としたCox回帰分析を行う。さらに副次評価項目である再栄養症候群徴候に含まれる各種イベント発生率を推定する。また、RS徴候と判断された症状のうち、一番早く発症したイベントまでの時間に対し、上記と同様の解析を行う予定である。 また、個々の症例に対して、血糖変動やその背景について更に詳細な観察を行う。
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