注意欠如・多動症(Attention Deficit Hyperactivity Disorder:ADHD)が神経発達症とてて認識されて久しいが、近年はその異質性が注目されている。また逆境的小児期体験(Adverse Childhood Experience : ACE)と成人後の精神障害の発症との関連が示唆されている。そのため、逆境体験の有無により発達障害を細分類できないかと考え、ADHDおよび自閉スペクトラム症(ASD)を含めて、逆境体験の指標や生物学的な指標を用いて検討を行った。熟練した2名の精神科医が対象患者に半構造化面接CAADID (Conners' Adult ADHD Diagnostic Interview For DSM-V) (日本語版)を行い、小児期及び現在のADHD症状を確認した。ADHD群で、ACE質問紙表を用いて逆境的小児期体験への暴露の有無を調査した。併存症として、知的発達症、精神病性障害、神経認知障害、器質性疾患を伴うものは除外した。ACEスコアが0の場合、ACE暴露(-)群、ACEスコアが1以上の場合にACE暴露(+)群とした。全ての対象者に対して、背景情報、社会的機能(LSAMI)、ADHD症状の重症度(CAARS)、認知機能(WISC-III、CAT)、脳画像(MRI)、神経生理学的検査(ERP、NIRS)を行った。 ASD with ADHD symptom群31名、ASD without ADHD symptom43名、Control41名をリクルートし解析を行っている。ASDはADOS2を用いて行い、ADHD symptomについてはCAARSを用いている。昨年度より全体数を増やして神経生理検査であるNIRS(VFTタスク)を行ったが3群間に有意な差は認めなかった。虐待の指標であるCATSやACEと NIRSの値との関係性も認めなかった。これらは前年のデータを様々な観点から再解析を行ったが同様の結果であった。
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