遺伝子情報からレビー小体型認知症(DLB)における抗認知症薬の治療反応性や介護者負担の因子を検証することを当初目的としていた。しかし、COVID-19の影響で、本研究の対象となり得る年齢層(60歳以上90歳未満)の受診控えが著しく、治療反応性の検証に必要な定期受診がCOVID-19の感染拡大情勢に左右され困難であった。そのため、遺伝子以外の因子で介護者負担を検証する研究計画の変更を一部要した。補助事業期間の延長も検討したが、その延長により当初計画していた研究の進捗が完結するのは困難と判断し、並行して他の因子を測定していたため、当初の期間で完了することとした。 DLBはレビー小体の拡がりという点で、認知症を伴うパーキンソン病(PDD)と同一のスペクトラムに属する。アルツハイマー型認知症(AD)では、糖尿病(DM)がADの発症及び認知機能障害の増悪因子で、認知機能障害が増悪すれば、ADの介護者負担が高くなることが報告されている。本研究の対象をDLB及びPDDとし、DM群(4名)と非DM群(5名)の2群間で介護者負担の検証を行った。主要評価項目はNPI-Qの負担度得点とした。本研究は、関西医科大学総合医療センター倫理審査委員会の承認のもと行われている。2群間で年齢、性別、MMSEに有意差は認めなかった。負担度得点は、非DM群で平均値2.0、DM群で平均値9.5と高値にあったが、有意差は認めなかった。本研究の特徴として、1型DMが22%と本邦の有病率より高く、1型DM群(2名)、2型DM群(2名)、非DM群(5名)の3群間で探索的に検証を行った。1型DM群ではNPI-Qの負担度得点は、平均値17.5と他の群より高値にあったが、有意差は認めなかった。結果、DLB及びPDDの介護者負担の因子は明らかにならなかったが、今後も、介護者の負担軽減の一助となる研究を進めていく予定である。
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