研究実績の概要 |
精神疾患の神経可塑性障害仮説について、脳脊髄液(CSF, cerebrospinal fluid)中の神経可塑性関連タンパク質群を磁性マイクロビーズを用いて多分子同時測定することで検証した。その結果、CSF中アミロイド前駆体蛋白質(APP, amyloid precursor protein)とグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF, glial cell derived neurotrophic factor)量は統合失調症患者で健常対照者と比べ有意に減少しており、CSF中APPと神経細胞接着分子(NCAM, neural cell adhesion molecule)-1量は双極性障害患者で健常対照者と比べ有意に減少していた。また、CSF中肝細胞増殖因子(HGF, hepatocyte growth factor)とS100タンパク質B(S100 calcium-binding protein B)量は統合失調症の陽性・陰性症状評価尺度、CSF中S100B量は双極性障害のヤング躁病評価尺度、CSF中HGF、S100B、及び血管内皮増殖因子受容体2量は大うつ病性障害患者のハミルトンうつ病評価尺度と有意に正に相関していた。さらに、大うつ病性障害患者で、CSF中APPとNCAM-1量は認知機能のうち作業記憶と有意に正に相関しており、CSF中NCAM-1量は左前頭眼窩回容量と有意に正に相関していた。これらの所見は、動物モデルで示唆されていた精神疾患の神経可塑性仮説を支持するものだった。
|