研究課題/領域番号 |
19K17077
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
山口 博行 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第七部, 科研費研究員 (40822557)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 深層学習 / 次元的アプローチ / 精神疾患 / 脳画像 / 人工知能 |
研究実績の概要 |
現在の深層学習を用いた精神疾患脳画像研究は、健常者と患者を判別するカテゴリー的アプローチが大半である。しかし、カテゴリー内の患者像が一様ではなく、カテゴリー間でも重複が見られ、病態解明に迫れていない。また、深層学習の過程で、疾患カテゴリー判別に関係ない情報は淘汰されており、深層学習の真価を発揮できていない。本研究は精神疾患カテゴリーに捉われず、症状・行動指標と生物学的基盤の対応を重視する次元的アプローチを採用する。その上で、脳画像から深層学習により症状・行動指標を標的とした特徴量の抽出技術を確立していく。 令和1年度は、ChainerやPytorchなどのライブラリを用いて3次元構造MRI画像を用いた特徴量抽出深層ニューラルネットワークの構築を行なった。また、健常者、統合失調症、発達障害の公開データベースから構造MRI画像、安静時機能的MRI画像を入手し、SPM、CONNなどのライブラリを用いて、通常のMRI解析と同様、位置の補正、撮像タイミング補正、頭蓋内分割化(頭蓋骨、灰白質、白質、脳脊髄液など)、正規化、平滑化などの前処理を行った。前処理後のMRI画像を用いて、ネットワークを学習させ、特徴量抽出を行った。特徴量は元画像の約6%に圧縮され、年齢、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS: Positive and Negative Syndrome Scale)、ウェクスラー成人知能検査(WAIS: Wechsler Adult Intelligence Scale)など心理検査結果、向精神薬の服薬量との相関を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、令和1年度は、3次元構造MRI画像を用いたネットワークの基礎的な構築と、MRI画像データセットの入手及び前処理を行う予定であった。 Chainer、Pytorchなどライブラリを用いて3次元構造MRI画像を用いた特徴量抽出深層ニューラルネットワークの構築を行なった。大まかなネットワークは構築できており、今後は入力情報や標的のラベルに合わせて、ハイパーパラメーターを調整していく段階に進むことになる。データセットの入手及び前処理が完了している。構築したネットワークに前処理後のデータを入力とし、特徴量を抽出を開始した。抽出した特徴量と様々な臨床情報との相関解析にも一部着手できている。以上より、当初の計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で、本研究はおおむね順調に進展しているため、令和2年度も当初の研究計画に基づいて推進していく。 構築した深層ニューラルネットワークモデルを、前処理後の3次元構造MRIデータに適応し、特徴量を抽出していく。抽出した特徴量と様々な臨床情報との相関解析を行いながら、特徴量抽出に最適なハイパーパラメーターを探索し、アルゴリズムの洗練を行なっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の使用額としては、研究室内の設備を利用できる部分が多かったため、クラウドコンピューティングサービスの利用や高機能な計算機の購入が必要なかった。 次年度は、より大規模な計算を行うことになるため、より高機能な計算機が必要となるため、その購入費用に当てることを考えている。また、研究成果が蓄積したこともあり、想定よりも多く学会発表・論文発表の機会があるため、その必要経費として割り当てる予定である。
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