研究課題/領域番号 |
19K17078
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
西谷 直也 金沢大学, 薬学系, 助教 (30824792)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | セロトニン / 注意選択 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、(Ⅰ)負の情動と関連した感覚刺激への注意選択を評価する実験系を開発し、(Ⅱ)直接的な神経操作や観察を駆使して、セロトニン神経回路の関与を明らかにし、(Ⅲ)ストレスによる注意選択の障害に対し、単一セロトニン神経回路の観点から新しい治療法を提案することである。昨年度中に、負の情動と関連した感覚刺激への注意選択を評価する新規行動実験系が確立できなかったため、様々な条件検討を行い、実験系の確立を目指した。 昨年度の結果から、現在の実験系では、特定の課題に注意を集中している場合には、電気ショックと関連させた場合でも不要な音などの刺激の入力を遮断している可能性が示唆された。これは、負の情動に関する感覚刺激により注意が阻害されるという、当初の予想に反する結果であった。この原因として、これまで、マウスを摂餌制限し、餌を報酬とする条件では報酬への欲求が強すぎるために、マウスが報酬に関連する光刺激に集中しすぎ、電気ショックと関連する音刺激に注意を引かれなかったことが考えられた。そこで、新たに回し車の回転を報酬とした課題を設計した。マウスは回し車を好んで回すことが知られており、実際に、穴に鼻先を挿入すれば回し車を回転できるような課題を設計したところ、頻繁に鼻先挿入を行うようになることを確認した。生命維持に関わる摂餌の代わりに、娯楽である回し車を報酬とすることで、人間が日常生活で発揮するものと同程度の注意機能を評価することが可能であると考えている。現在この手法を用いて注意選択課題を訓練中である。また、in vivo カルシウムイメージング法による前障神経活動の観察を試みた。まず、比較的難易度の低い、マウスの頭部を固定した状態で観察を行い、前障神経の神経活動を観察できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に確立させる予定であった行動試験系の条件検討に時間がかかっており、当初予定していた神経操作、神経活動を組み合わせた実験まで至らなかった。一方で、神経活動操作や観察に用いるウイルスベクターの作製および機能確認はすでに終了しているため、行動課題が確立でき次第すぐに実験可能な状態となっている。また、エサの代わりに回し車の回転を報酬としたことで、摂餌制限などが不要となり、今後、ストレスの少ないより正常な状態での注意機能を評価することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
新たに設計した回し車の回転を報酬とした実験系で、負の情動と関連した感覚刺激への注意選択を評価する新規行動実験系の確立を試みる。また、当初の想定と違うものの、現在観察されている負の情動と関連した感覚刺激によって注意が阻害されない条件において、セロトニン神経の活動操作を行った場合に注意選択がどのように変化するかについて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により学会参加のための旅費が不要となったことに加え、一時実験が停止せざるを得ず、試薬購入を次年度に見送ったため。実験の遅れを取り戻すために、次年度に試薬購入と実験装置の追加購入に充てる予定である。
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