研究実績の概要 |
慢性的な飢餓状態と関連して神経性やせ症患者では二次性のカルニチン欠乏が想定されるが、既報はいくつかの症例報告のみである。今回、我々は再栄養療法中の重度の低体重を伴う摂食障害患者において、カルニチン欠乏症が生じているという仮説を立て、そのカルニチン欠乏症が治療経過において肝障害、低タンパク血症や体重増加不良等の悪影響をもたらしているかを明らかにすることを目的とした。 摂食障害患者56名を対象としたコホート研究において、血漿遊離カルニチン(FC)値を測定し、健常群(35名)との比較を行った。 患者56名の入院時の年齢とBMIの中央値はそれぞれ、26歳(IQR21-35), 13.8(IQR12.8-14.8)だった。再栄養療法を開始後、約1ヶ月の時点で55%においてカルニチン欠乏が認められる、またはカルニチン欠乏症予備群であることが判明した。この低カルニチン血症は再栄養療法中の貧血と関連していた(OR:0.445; 95%CI:0.214-0.926, p=0.03)。更に、入院時BMI(OR:0.478; 95%CI:0.217-0.874, p=0.014)と入院時点の中等度以上の肝障害(OR:6.385; 95%CI:1.170-40.833, p=0.032)が、再栄養療法中の低カルニチン血症と有意に関連していた。 今回の調査において、低栄養状態を伴う摂食障害患者の再栄養療法中、つまり代謝の転換期において低カルニチン血症を認めた。この低カルニチン血症は再栄養療法中の貧血と関連しており、特に入院時BMI13未満の重度の低栄養状態を認める患者群, 更には入院時点で中等度以上の肝障害を認める患者群は、低カルニチン血症出現のサインと考えられた。
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