研究課題/領域番号 |
19K17093
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
守谷 俊平 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (60647139)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ファイバーフォトメトリー / ドーパミン神経 / セロトニン神経 / ノルアドレナリン神経 / B9セロトニン神経核 |
研究実績の概要 |
本年度においては、カルシウムイメージング法を利用したファイバーフォトメトリー法において様々な条件においてマウスの脳内において特定の神経活動を計測する実験を施行している。ドーパミン神経に特異的にCreを発現させるDATCreマウス及び統合失調症モデルマウスであるDISC1マウスを使用してドーパミン神経と統合失調症の関係性を測定する実験系を進行している。また、セロトニン神経活動とノルアドレナリン神経活動を痛覚刺激条件下にて評価する実験系を進行した。痛覚刺激条件下で、セロトニン及びノルアドレナリン神経の脳幹における使用脳幹起始核において神経活動が急激に上昇することを示した報告をした(Moriya et al., IBRO report, 2019)。また、新規セロトニン神経起始核である毛帯上核(B9)のセロトニン神経細胞体における、痛覚刺激時の神経活動を測定し急激に神経活動が上昇することを測定し、また、同部位からのセロトニン神経投射先である青斑核及び腹側被蓋野のおけるセロトニン神経軸索における神経活動を測定し、ほぼ細胞体と同時に神経活動が上昇することを報告した (Moriya et al., Molecular Brain, 2020)。本研究はB9セロトニン神経系における電気生理学的手法を使用して機能を評価した初めての報告であり、非常に意義深いものと考える。また、青斑核及び腹側被蓋野は下降性疼痛制御系における脳幹の重要な神経核であり、B9-青斑核系及びB9-腹側被蓋野系のセロトニン神経系は下降性疼痛抑制系の制御する可能性を示唆する報告であり、その意味でも意義深い報告である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ファイバーフォトメトリー法を用いて実験の遂行は順調に進んでいる。本年度においては、英語論文報告をモノアミン神経活動測定を主題をしたもので2本の報告を実施した (Moriya et al., IBRO report, 2019; Moriya et al., Molecular Brain, 2020)。また、2度の学会発表を施行した (日本神経精神学会学術集会 2019, 日本生物学的精神医学会学術集会 2019)。セロトニン神経系及びノルアドレナリン神経系においての種々の条件下でのマウスの脳内における特定部位における特に瞬間的な神経活動の測定は良好な進捗をしている。また、ドーパミン神経系においても概ね順調に進捗している。ドーパミン神経の主要起始核である不確帯 (A13) における痛覚刺激条件下での神経活動の測定を施行し、神経活動が痛覚刺激により急速に上昇することを確認した。既に英語論文を投稿しており、次年度において論文報告できる形となっている。また、統合失調症モデルマウスのDISC1mutantマウスを使用して、統合失調症における神経活動及び特に動きを中心した行動測定を施行して、順調に進行している。更に、薬剤投与による実験系も追加しており、アデノシン神経系の統合失調症及びドーパミン神経系における関連の検証を進めており、実験は概ね順調であり、次年度には英語論文投稿や学会発表が可能となると推定できる状態にまで研究は進捗しており。上記から、概ね当初の予定に準じて進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(2020年度) においては既に英文での論文報告を1報施行した (Moriya et al., Molecular brain, 2020)。今後の主要な方策としては、主のドーパミン神経特異的にCreを発現するDATCreマウス及び統合失調症モデルマウスであるDISC1マウスを用いて、統合失調症におけるドーパミン神経活動及び動きを中心とする行動解析を用いて神経活動と動作の関連の研究を進める。また、統合失調症の薬物治療の選択肢は精神科領域においてドーパミン神経受容体拮抗薬を中心にいくつかあるが、現在までにアデノシン神経関連のものは採用には至っていない。そこで、申請者らは特にアデノシン2A受容体拮抗作用が統合失調症に対して治療効果を持つかどうかの研究をしてきている。上記の神経活動や行動の解析の実験において、アデノシン2A受容体拮抗薬を用いた実験系を採用して、これまでに実験は順調に進捗していおり、今後実験を更に進めていく。また、中枢神経系においてはドーパミン神経系とノルアドレナリン神経系は密接に関連して、精神科領域の疾患の病態においてもしばしば重複する。そのような背景から、ノルアドレナリン神経特異的にテトラサイクリントランスアクチベーター (tTA) を発現するDBH-tTAマウスとDISC1マウスを用いて上記のドーパミン系の実験手法に準じるプロトコールでノルアドレナリン神経と統合失調症の病態の関連についての実験解析を進めていく。これらの進捗により、統合失調症とドーパミン神経及びノルアドレナリン神経の関連について詳細な解析が可能となると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を概ね順調に実行し必要に応じて研究を使用した結果当該助成金が生じた。これについては、実験の状況から当該研究の主にファイバーのかかる実験経費として使用する計画である。
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