統合失調症患者における、概日リズム睡眠・覚醒障害(CRSWD)の併存率や、CRSWDが併存することによる精神病症状の悪化との関連、社会機能障害との関連については明らかではなかった。本研究は東京女子医科大学倫理審査委員会での承認を経て実施された。東京女子医科大学病院神経精神科外来を通院した統合失調症患者を対象とし、CRSWDに関して評価するとともに、精神病症状、社会機能障害についての情報を得た。2020年3月までに139例を組み入れ、解析対象となった105例に対して横断面での中間解析を行った結果、統合失調症患者の18.1%にCRSWDが併存する可能性が示唆された。CRSWD併存群とCRSWD非併存群とで比較した結果、CRSWD群では非CRSWD群に比べて簡易精神症状評価尺度(BPRS)スコアが高く、機能の全体的評価(GAF)スコアが低い傾向が見られた。BPRSの下位項目のうち、不安のスコアがCRSWD群において非CRSWD群よりも有意に高かった(p < 0.01)。これらの横断データの結果は論文にまとめ、Journal of Clinical Medicine誌にて出版された。さらにその後の経過を追った縦断研究においては、CRSWDのなかでも入眠困難、起床困難を特徴とする睡眠・覚醒相後退障害が併存した群で、その他の患者群と比較しその後の入院率が有意に高いことがログランク検定により示された(p < 0.05)。本研究成果については日本睡眠学会のシンポジウム「統合失調症における睡眠・生体リズム変化と治療戦略」にて報告した。現在追加解析は終了しており、英文科学誌への投稿を目指し、論文執筆をしている段階である。
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