当初の計画では、ネットワークメタ解析を用いて、せん妄に対する薬物および非薬物療法の有効性と安全性およびせん妄の発症予防を検討することを目的としていた。しかしながら、同様の趣旨のネットワークメタ解析(Wu YC 2019)が科研費の取得後に発表されたため、研究計画を変更した。令和2年1月、新しいオレキシン受容体拮抗薬であるレンボレキサントの使用が承認された。レンボレキサントは、プラセボ比較の第三相企業治験において、不眠症への良好な有効性と安全性が示されている。しかしながら、レンボキサントのせん妄発症予防に関する研究は未だ世界中で一つもない。また、ラメルテオンとスボレキサントに関する先行研究(Hatta K 2014、Hatta K 2017)は不眠を有する患者を対象としていないので、これらの薬のせん妄に対する使用は保険適応外となる。そこで、新しく計画した本研究では、不眠を訴え、かつ、せん妄の発症リスクを有する患者を対象として、レンボレキサント(介入群)とラメルテオン(対照群)のせん妄に対する発症予防効果を比較することにより、実臨床におけるレンボレキサントのせん妄発症予防効果を検証することとした。申請者はレンボレキサントの発売直後(令和2年度)に本研究のリクルートを開始し、研究期間内に61例の患者をエントリーすることができた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の蔓延により業務が滞ったため目標症例数に達していない。また、レンボレキサント群とラメルテオン群において、重篤な有害事象の報告はなかったが、本研究は二重盲検法による薬剤介入を行っており、研究が完遂できていない現時点ではデータの開示ができないため、有効性・受容性・忍容性・安全性に関して、レンボレキサント群とラメルテオン群を比較した統計学的解析は行っていない。引き続き、目標達成に向けて本研究を継続する。
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