研究課題/領域番号 |
19K17101
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
久保田 学 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 脳機能イメージング研究部, 研究員(任常) (30760368)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 統合失調症 / PET / MRS |
研究実績の概要 |
ホスホジエステラーゼ10A(PDE10A)は脳内のドーパミンやグルタミン酸の制御に関わる酵素であり、統合失調症の病態に深く関わると考えられている。 PDE10Aを主要ターゲットとした本研究を推進するにあたり、2019年度はPDE10Aを標的分子とするPETリガンドを用いて統合失調症患者のPET撮像データを取得するとともに、統合失調症の病態理解を深めるためにグルタミン酸代謝物を中心とした脳内代謝物に関する統合失調症のMRS研究のメタ解析を行った。さらに他の精神疾患における脳変化と比較することにより、統合失調症における脳変化の特異性に関する検討も進めている。 PDE10A PET撮像に関しては、目標症例数の半数以上のデータ取得を終え、中間解析に着手した。PDE10Aは線条体および淡蒼球に最も多く発現することから、個人MRI T1強調画像を用いて線条体・淡蒼球を解析の関心領域に定めた。binding potentials (BPND)をPDE10A結合能の指標とし、PDE10Aの発現がみられない小脳を参照領域としてsimplified reference tissue model (SRTM)によるPETデータの予備定量解析を行った。結果、患者群・健常群ともに安定した定量値が得られた。次年度以降、グループ解析や相関解析の緻密化を行っていく。 統合失調症のMRSメタ解析に関しては、縦断研究のデザインにて統合失調症患者の治療前後のMRSデータを比較した過去の画像研究を系統的に調べ、治療による脳内代謝物の変化に関する統計解析を行った。結果、治療により前頭葉におけるグルタミン酸・グルタミン量が有意に低下し、一方で視床のN-acetylaspartate量が有意に増加することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標症例数の半数以上のPETデータ取得を終えている。
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今後の研究の推進方策 |
統合失調症患者のPETデータの取得を継続し、解析の緻密化を行う。MRI, MRSデータを含めたマルチモダルな神経画像的アプローチを取り入れる。さらに器質性変化の評価も組み合わせながら、統合失調症圏の層別化を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予備解析の段階では高性能のコンピューターおよび専門的な画像解析ソフトの一部を未使用の状態でも一定の検討が可能となったため、物品費が予定より少額となった。 新型コロナウイルス感染症蔓延に伴いいくつかの学会開催が延期・中止となったため、旅費が少額となった。 ともに差額分については令和2年度中に使用予定である。
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