研究課題
ホスホジエステラーゼ(PDE)は環状アデノシン一リン酸(cAMP)/環状グアノシン一リン酸(cGMP)の分解酵素であり、11種類のファミリー(PDE1-PDE11)からなる。このうちPDE10Aは線条体の中型棘神経細胞(MSN)や淡蒼球に高発現している。PDE10Aは脳内のドーパミンの制御に関わり、統合失調症の病態に関与すると考えられている。2021年度までに、統合失調症患者群22名、健常群26名のPDE10A PET撮像を終えた。目標症例数のデータ収集をほぼ達成したと判断し、これにてデータ取得を完了させた。解析に関しては個人MRI T1強調画像を用いて線条体・淡蒼球を関心領域に定め、binding potential (BPND)をPDE10A結合能の指標とし、小脳を参照領域としてsimplified reference tissue model (SRTM)によるPETデータの定量を行った。過去の研究から、年齢や性別がPDE10Aの状態に影響を与える可能性が指摘されていることから、これらの因子を共変量に入れたグループ解析の緻密化を進めている。一方で、同じPDEの中でPDE7はcAMPの選択的分解酵素であり、同様に精神神経疾患の病態に関わると考えられている。我々はPDE7を対象としたfirst-in-human PET研究も同時平行で進め、世界ではじめてPDE7のヒト脳内可視化および安定した定量性について報告した。
2: おおむね順調に進展している
目標症例数の画像データ取得を終え、現在解析の緻密化を行っている。
PDE10A PET解析の緻密化を行う。疾患におけるPDE10Aの状態を探索し、認知機能との関連やMRI情報との関連も含めて包括的に解析を行う。参考データである双極性障害患者を対象としたPDE10A PETの結果とも比較し、疾患特異性について検討する。
新型コロナウイルス感染症蔓延のため、参加学会全てがweb開催となり、旅費使用が大幅に減少した。一方で、論文執筆は順調に進んでおり、差額に関しては英文校正や論文投稿料等に捻出する予定である。
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European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging
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