研究課題/領域番号 |
19K17103
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
坂本 由唯 弘前大学, 医学部附属病院, 助手 (60770386)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / fragile X syndrome / 早期療育 / 養育行動 / USV |
研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(ASD)は有病率が高いが治療法がない。唯一効果があるのは、早期に子どもを適切な養育環境に置きトレーニングする早期療育であると報告されている。 しかし、早期療育のメカニズムは未解明である。本研究は、ASDモデル動物のFmr1-knockout(KO)マウスを用いて、早期療育の有効性に関するメカニズムを解明する。 本研究により生物学的にASD特性を有する児に対しても、乳幼児期から適切な介入を行うことで予後を改善できる可能性が示されれば、より適切な早期療育の開発が行われ、ASD患者の社会適応および予後の改善が期待できる。令和元年度、我々はより的確に母マウスの養育行動を観察及び評価するため実験方法を再考した。当初仔マウスをFmr1-KO群とFmr-WT群とに分けて観察する予定であったが、この場合、KO群とWT群の母マウスのgenotypeが異なるものとなり、仔マウスのPhenotypeが自身のGenotypeによるものか、KO母マウスの養育行動の異常によるものか評価が難しくなる。また測定日にもばらつきが生じ、測定日毎のばらつきも統制できなくなるため、まずKO雌マウスとKO雄マウスを交配し、ヘテロの雌マウスを作成した。そして、ヘテロの雌マウスとKO雄マウスを交配させ、仔マウスの同胞内にKOマウスとWTマウスを混在させた。出産日に巣作りを、生後3日目に養育行動を、生後7日目に仔マウスの超音波発声を評価した。そして、生後3週目にWestern blot法でFMRP発現を調べ、仔マウスがWTかKOかを調べるという実験方法を確立した。そして、生後6週目及び8週目に仔マウスのself-groomingとAffiliative social interaction、Three chamber試験を観察し、仔マウスのASD様行動を評価している。これまでにN=30以上の仔マウスのデータを収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
養育行動を観察したが母マウス毎にばらつきが大きく、交配方法及び養育行動の観察方法の再考に時間を要した。また、動物実験施設の改修工事がモデル動物の交配及び養育行動に影響を来し、またCOVID-19感染症のパンデミックの影響により解析用パソコンの納期の目途が立たず購入できなかったこと等から、予定よりはやや遅れているものの進行はしている。
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今後の研究の推進方策 |
当初はdouble mother法を用いて、Fmr1-WT群(WT群)とFmr1-KO群(KO群)をより良い養育環境が期待されるEnriched群とStandard群とに分けて評価する予定であったが、この場合、KO群と WT群の母マウスのgenotypeが異なるものとなり、仔マウスのPhenotypeが自身のGenotypeによるものか、KO母マウスの養育行動の異常によるものか評価が難しくなる。また測定日にもばらつきが生じ、測定日毎のばらつきも統制できなくなる。故に、より正確に母マウスの養育行動の影響を評価するために、ヘテロの雌マウスを作成し、仔マウスの同胞内にWTとKOが混在するように交配をかける方法に変更して実験を進めている。また、当初は巣の中にいる仔マウス3 匹を巣から離れた三隅に1 匹ずつ置き30分間観察していたが、巣の中に仔マウスが残っていると巣から離れない母マウスが多かったため、全仔マウスを三隅に均等に移動させ養育行動を観察するという方法に変更した。今後は令和元年度に確立した実験方法を使いながら実験データを蓄積し、解析を進める。更に、臨床治験において単独投与及び療育との併用でASDへの治療効果が確認されているBumetanideも用いて、養育行動及びBumetanideのASD症状への影響を調査していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析用パソコンの購入を予定していたが、COVID-19感染症の影響でパソコンが入荷せず年度内に購入できなかったため、次年度購入予定となった。また、旅費は臨床研修の助成を使ったので科研費を使用できなかった。試薬品や実験用動物に関する経費は他の予算から捻出していた。次年度はパソコンや試薬品、実験用動物などの物品費、旅費に使用する計画である。
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