研究課題/領域番号 |
19K17115
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
富永 敏行 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50360037)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 身体症状症および関連症群 / 身体表現性障害 / 身体的苦痛症 / 疼痛性障害 / 認知行動療法 / 集団精神療法 / ピアサポート / オンライン |
研究実績の概要 |
「身体症状症および関連症群(SSRD)に対するグループ認知行動療法の効果」(当学学内医学倫理審査委員会ERB-C-1943)について2021年12月から開始している。その病態の概要および理論については、2021年度は下記を執筆した。1)富永敏行.講座 精神疾患の臨床 第4巻「身体的苦痛症群 解離症群 心身症 食行動症または摂食症群」の「身体的苦痛症と慢性疼痛」 の稿を執筆(pp 25- 36)。中山書店、2021年7月発刊。2)富永敏行. 身体症状症の概念、診断の技、現場での応用.精神科診断学 14 102-108, 2021年。学術大会では、第128回近畿精神神経学会『疼痛が主症状の老年期うつ病に対して修正型電気けいれん療法が奏功した1例』(2021年7月31日)の共同演者としてSSRDの病態と関連して発表した。第21回日本認知療法・認知行動療法学会総会 大会企画シンポジウムにて登壇『身体症状症(慢性疼痛を含む)に対する認知行動療法と身体的治療のコンビネーション』(2021年7月9日)で研究内容について発表した。 本研究については、先述の通り、2021年12月から開始している。1グループで患者は3人、臨床心理士(公認心理師)1名、精神科医の私の合計5名で構成され、オンラインで参加としている。1セッション90分間、1クール8セッション、週に一回開催している。セッションは電子データで録画し、外部環境とは隔絶された個人認証を要するパソコンに保存している。各セッション後には心理検査を紙媒体あるいはオンラインで自己記入式回答で実施し、効果判定をしている。現在、第3グループ(1グループ3名の患者)で実施中で、n=9である。患者からの評価は概ね良い。苦情やトラブルも発生してない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
身体症状症(Somatic Symptom Disorder; 以下、SSD)および関連症群(Somatic Symptom and Related Disorders:SSRD)に対するグループ認知行動療法の有効 性を検証するため、中核群のSSDについて、効果判定できる尺度の作成を行っている。現時点では、本邦でSSDの評価尺度が存在しないが、海外でToussaint A.ら によってSSD-12尺度が開発された。その信頼性および妥当性は検証されている。SSD-12の日本語版を作成する必要があり、原著者には許可を得て、逆翻訳も行い、日本語版は作成済みである。SSDー12日本語版の信頼性および妥当性の検証については、当学医学倫理審査委員会を通している(ERB-C-1346-3)。現在、140症例集まっている。 研究推進のために他科との診療体制を強化目的で、2020年6月専門の紹介初診枠を開設した。同年、本研究者と疼痛緩和科が主体となり、当院が厚生労働行政推進調査事業費補助金研究班の集学的痛みセンターを立ち上げ、2020年11月に施設認定された。2021年1月から月に1回多職種合同カンファレンスを開始し、SSRDの啓蒙、当科での診療、被検者のリクルートに繋がっている。 ただし、グループでの認知行動療法の実施にあたりCOVID19感染症のため集団で病院内で実施することが困難になり、オンラインでの実施に切り替え、医学倫理審査委員会でも計画変更の申請をせざるを得ないこととなり、時間を要しており、遅れている。しかしながら、オンライン形式での実施について医学倫理審査委員会に承認を受け、2021年12月から数名単位での介入を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
実施間際にコロナ禍になったため、私は病院外来という現場での集団療法は感染対策の面から不適切と判断し、オンラインでの実施することに実施形式を転換した。そのため、医学倫理審査委員会での研究計画書の改定が必要となり、2021年度に認可された。そのため、実際の研究の開始時期が、当初計画よりも遅れ、2021年12月となった。患者リクルートのため、本研究用のパンフレットを作成しており、外来にも掲示している。2020年に当院が集学的痛みセンターに認定されたこともあり、総合診療部、疼痛緩和科、膠原病内科など関連する診療科とは連携が強化されており、協力依頼している。研究も含めて紹介による初診専用枠を院内で開設した。今後も、外来での診療患者を通して、患者リクルートを行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
被験者への実施に際して、コロナ禍で実施方法を、当初の病院内で行う方法から感染予防のためにオンライン方式に変更したため、開始がずれ込んだため、次年度に使用額を持ち越した。2022年度は、本研究の集団療法の実施頻度を上げる予定であり、その分、研究補助員の人件費を前年以上に必要とする。また、実際に運用していると被験者候補者の一部には、自宅などでインターネット環境が用意できないために参加ができない者がおり、情報格差の問題がある。そのためインターネット環境のある大学病院でパソコンを用意することも検討しており、その際は物品購入などの経費が必要となる。
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